大阪府では新型コロナウイルス感染第6波でコロナ死者数が全国最多に。保健所業務は急激にひっ迫、医療は崩壊し、救える命が救えない事態となった。大阪府のコロナ対策、保健所の現状と課題を振り返る。
保健所職員数もワースト1
維新府政で職員をさらに削減
大阪府内の保健所数は61カ所(2000年)から18カ所(20年)に削減された。大阪市の保健所はわずか1カ所しかない。
08年に大阪維新の会の橋下徹大阪府知事が誕生し「全国一スリムな自治体をつくる」を目標に掲げ、保健所職員も減らされ続けた。人口あたりの職員数は全国ワースト1となった。橋下氏は自身のツイッターで20年4月3日に「徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させている」と認めている。
第4波では、高齢者施設で連日のクラスターが発生し、高齢者の方が自宅や施設に放置され亡くなった。
大阪府職労は昨年7月に、大阪府に対して「要望書」を提出し、「療養ホテルを充実させ、必要な看護師を配置し、適切に医療・看護が提供できるようにすること。クラスターが発生した高齢者施設に対し、適切な支援体制を整備すること」を求めてきた。しかし、入院も宿泊療養もできない実態は改善されなかった。
維新府政は、「出口戦略を示す」と言い「大阪モデル」という独自基準まで作り、病床使用率を指標としつつ、それを増やさないために、入院を抑制してきた。その結果がコロナ死者数最多である。 出口戦略どころか、出口すら見えない状況に陥った。
吉村洋文知事は、保健所の職員増員や体制を十分に強化せず、21年8月には「1000床単位の野戦病院を作りたい。できない理由よりできる理由を考える」と表明した。実際に作られたのは「病院」ではなく「療養・隔離施設」であり、入所できるのも若い人に限られた。総予算84億円をかけ整備したものの、入所者は1日最大で70人、累計でも300人にも満たず、5月には閉鎖・撤去された。
カジノや万博を優先する府政ではなく、公衆衛生、医療、福祉を最優先にする府政へと変えていかなければならない。
科学的根拠に基づく対応を
新型コロナ対策で大阪府・市政の迷走ぶりは依然として続いている。救えるはずの命が救えない状況、その背景には何があるのか。感染拡大第6波を迎えた時期に大阪府は人口当たりの重症者数・死者数全国ワーストワンの汚名を受けた。
病院のベッドはコロナ感染者であふれ、適切な治療を受けられずに命の危険にさらされる患者、不幸にして亡くなる人もいた。高齢者施設においてもクラスター増加の方向にあるなか、施設での感染者が入院できず、そのまま亡くなるという事態もみられた。
感染者の発生届の入力漏れが報告され、罹患者の症状悪化につながるケースも認められた。感染確認された人へ保健所から電話連絡で健康管理を行う「ファーストタッチ」の対象は65歳以上、重症化リスクのある人にとどまり、外来入院は中等症Ⅱ以上に限られた。
大規模医療センターは早々に撤退
大阪維新府・市政はコロナの検査や治療が困難な医療機関を一律「非コロナ受け入れ病院」とする一方でコロナを軽視し科学的な根拠に基づかない施策を続けた。
急性期病床の削減に加え、大阪南港に設置した大規模医療・療養センターは医師・看護師の配置の不備で早々に撤退するという有様である。
われわれ医療従事者がここまでの状況から提言することは、コロナ感染を早期に発見、隔離し検査体制、保健所・医療体制の強化を一刻も早く整えることである。カジノや万博を優先するのではなく、府民の命を第一に考える政策を推し進めることこそが最重要課題である。