2025年4月8日
全国保険医団体連合会
会長 竹田智雄
乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われた事件の差戻審で東京高等裁判所は3月12日、第一審判決に対する検察側の控訴を棄却し、無罪の判決を言い渡した。25日に東京高等検察庁は上告を断念し、外科医師の無罪判決が確定した。当然の結果であり当会はこの判決を心から歓迎する。
一方で2016年の逮捕、起訴から8年半の歳月を経ての無罪確定は遅きに失する。長期にわたって被告人の立場に置かれ、「生活や仕事そして家族を奪われた」と語る外科医師とその家族の艱難辛苦は計り知れない。
今回の判決では、警視庁科学捜査研究所(科捜研)によるアミラーゼ鑑定及びDNA定量検査には、術後せん妄の可能性を否定できない証言を支えるだけの証明力は認められず、一審の無罪判決の判断に誤りはないとされた。無実の外科医師を逮捕、勾留した警察、第一審の無罪判決の後にも控訴して裁判を長期化させた検察の責任は重大であり、満身の怒りを持って抗議する。
さらにこの事件が医療現場の萎縮、医療界への不信を招いたことも看過できない。通常の医療行為で今回のようにえん罪が発生する可能性があれば、医師など医療者は安心して医療提供することができない。患者との信頼関係構築も困難になり、ひいては患者の生命や健康に影響を及ぼす懸念がある。安心、安全の医療を確保するためにも、警察や検察による医療機関への不当な介入が二度とされることのないよう強く求める。