【声明】安倍元首相の国葬に反対する

安倍元首相の国葬に反対する

 岸田内閣は、7月22日、安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に日本武道館で行うことを閣議決定した。安倍元首相の国葬を行うことについて、世論の賛否は大きく分かれており、これを強行することは、重大な問題をはらんでいる。憲法に基づく民主主義を守る立場から安倍元首相の国葬に強く反対する。

 現在、国葬には法令上の根拠はなく、戦前においては国葬令があったものの、これは日本国憲法に不適合なものとして失効している。
この点、岸田首相は、内閣府設置法の内閣の所掌事務である「国の儀式」にあたるとして、閣議決定があれば国葬は実施可能と説明している。しかし、戦後、唯一の例外として挙行された吉田茂元首相の国葬に関しても、塚原敏郎総務長官(当時)は「根拠になる法律もなく苦労した」と述べている。また、佐藤栄作元首相に関し、国葬の実施が検討された際も、「法的根拠が明確でない」とする内閣法制局の見解等によって見送られてきた経過がある。
このように岸田政権が強行しようとしている国葬には法的根拠はない。法令上の根拠のないまま内閣の独断で、かつ、国費で行うことは、財政立憲主義の観点からは許されるものではない。

 国葬となれば全額を国費で賄うこととなる。一部の報道によると30数億円も経費がかかるとされている。国葬に使う予算があれば、コロナ禍や物価高に苦しむ国民生活を支援すべきである。

 また、直近の各種世論調査でも国葬については、賛成より反対の声が上回っている状況である。そういうなかで、国葬が実施されると、安倍氏への弔意をすべて国民に対し、事実上強要されることになりかねない。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑みても、この時期に国葬が執り行われることは疑問である。

 以上のことから安倍元首相の国葬に反対し、閣議決定の撤回を求めるものである。