【談話】2022年度診療報酬改定率について

※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:224KB]

医療の再建に背を向けた改定率に抗議し、大幅ネットプラス改定を求める

2021年12月22日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

厚生労働省は12月22日、2022年度の診療報酬改定率を発表した。技術料本体に相当する「診療報酬」について、「看護の処遇改善」で+0.20%、「不妊治療の保険適用」で+0.20%とする一方、「リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進」で▲0.10%、「小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来」で▲0.10%とする。更に、これら以外で+0.23%として、合わせて「診療報酬」は+0.43%となる。薬価・材料の▲1.37%を含めたネット(全体)での改定率では▲0.94%となる。

安倍政権下で強められた医療費抑制が岸田政権でも継続され、薬価引下げ財源の本体への振替を一方的に反故にした5回連続のネットマイナス改定となる(2014年度は消費税対応を除き実質ネットマイナス)。しかも、本体に相当する改定率+0.43%は、新型コロナウイルス感染症到来前の2020年度の同改定率+0.55%よりも低い。急ぐ道理も必要性もないマイナンバーカード普及には1兆8千億円もの巨額の血税を投ずる一方、コロナ禍で大きく傷ついた医療の再建・拡充には背を向ける姿勢と言わざるを得ない。

「看護の処遇改善」で月1万2千円の収入引上げとされるが、他のコメディカル配分も可能であり実際の引上げ幅は更に低くなる上、コロナ治療等を担う救急医療機関に限定されている。全ての医療機関が一体となり地域を面として支えている。全ての医療従事者の抜本的な賃金引上げにつながる財源を確保すべきである。また、不妊治療の保険適用は公費助成事業から保険診療に切り替わるものであり、大半の医療機関の経営改善にはつながらない。補助金を含めても医療機関全体がコロナ前の経営水準に戻っていない中、本体+0.43%では、コロナ以前の医療水準への回復も困難であり、疲弊した医療現場の抜本的改善には程遠いものである。

今次の診療報酬改定の基本方針にコロナ感染対応を重点課題として位置付けているにも関らず、感染防止対策に係る外来特例廃止、PCR検査等の評価引き下げに続き、小児の感染防止対策に係る特例(医科)も廃止される。受診控えに伴う心身状態悪化や重症化が相次ぐ中にもかかわらず、「リフィル処方箋」を導入・推進して受診を間引くよう図る。更に、7対1看護病床の削減を進める「入院医療の評価の適正化」、強引な早期退院を促進しかねないDPC制度等での「更なる包括払いの推進」や、高齢者・慢性疾患患者のADL低下等も危惧される「湿布薬の処方の適正化」などを「着実に進める」よう求めている。これらは、コロナ感染防止体制の弱体化、患者が受ける医療の質の低下や地域医療の混乱・疲弊を進めるものにほかならず、即時撤回すべきである。

安倍政権が強力に進めた医療費抑制の下、診療報酬改定率はこの間の物価・人件費の上昇にすら届いていない。平時の医療が弱体化されてきた中、更にコロナが直撃し全ての医療機関が深刻なダメージを受けている。
本会は、医療の再建・充実が強く求められる中、医療の再建に背を向け、更には医療崩壊を進める2022年度の診療報酬改定率に対して強く抗議するとともに、大幅なネットプラス改定を求めるものである。