【談話】高薬価構造の是正には程遠い ~2022年度薬価制度改革の骨子について~

※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:373KB]

2022年度薬価制度改革の骨子について

2021年12月24日
全国保険医団体連合会
医科政策部長 竹田 智雄
歯科政策部長 池 潤

 

中医協総会は12月22日、2022年度の薬価制度改革の骨子を了承した。高薬価の是正に向けて、薬価算定制度の抜本的見直しが必要だが、骨子では、原価計算方式について一部改善が見られるものの、新薬創出等加算の対象品目が拡大されるなど高薬価構造の是正には程遠い内容である。

原価計算方式では、輸入製品を中心に情報開示が低調な状況に鑑みて、製品総原価のうち開示度50%未満(最低評価)の製品については、補正加算の評価を0.2掛けからゼロに引き下げるとした。税金・保険料等で成り立ち、売上も保証されている公的医療保険財政の下、公定価格である薬価において、製品価格の申請コストの内訳・根拠について国(一般非公開)にさえ満足に示されない以上、補正加算が加味されないのは当然である。本来、薬価算定上のインセンティブに関わりなく情報開示は徹底されるべきであり、少なくとも原価計算方式については2018年度の薬価制度「抜本改革」前の仕組みに戻した上、情報開示が不十分な場合、算定される営業利益率を引き下げるなどの措置を検討すべきである。
情報開示に関わって、本年4月の薬価算定組織より議事録が公開されているが、算定薬価の引き上げにつながる各種加算をめぐる企業とのやりとりなどがマスキングされていたり、企業側の提出資料は公開されていない。情報開示に向けて、更なる改が必要である。

新薬創出等加算について、企業区分Ⅲについて最低点数(0ポイント)から2ポイントに引き上げるが、除外対象となるのは89社のうち8社(2021年度改定)にすぎない。他方、一定の効能等が追加された新薬や特定用途医薬品などにも加算対象品目が拡大されており、窓口負担増に伴い患者の医療アクセスが阻害されることとなる。新薬のイノベーション評価は、税制・補助金(予算)などでも対応は可能である。新薬創出等加算は廃止すべきである。

診療報酬改定年度の合間に行う薬価改定については中止すべきである。頻繁な薬価改定の実施により、後発品や長期収載品など値下がり幅の大きい品目が集中的に引き下げられ、医薬品の安定供給に更に支障を来しかねない一方、新薬の薬価が高止まりする傾向が更に強まる事態が危惧される。高薬価の是正に向けて、事実上医薬品卸がより高い価格で医療機関に納入した見返りに、製薬メーカーが医薬品卸にリベート等を支払い利益補填する不正常な取引慣行を是正・解消し、医療機関と医薬品との間での自由な経済取引を保障することが必要である。

この間、新薬は全体の品目数に占めるシェアは減少する一方、金額に占めるシェアは上昇し、16%の数量で薬剤費の6割超を占めるなど薬剤費の高騰をもたらしている。安全性と有効性が担保された医薬品はすべからく保険収載してきた我が国の公的医療保険制度を守っていくため、本会は公正で透明な薬価制度の構築を強く求めていく。