コロナ禍は、多くの女性の雇用や生活を直撃した。
最初の緊急事態宣言が発出された昨年4月の雇用者数の減少は、男性35万人に対し女性は倍以上の74万人。同月の休業者数は男性が240万人に対し女性が357万人となった。影響が大きかったのは、非正規雇用の女性である。昨年の非正規労働者数の減少は、男性が月平均で26万人に対し、女性は約2倍の50万人となった。
特にシングルマザーの現状は深刻だ。もともと、就労するシングルマザーは半数以上が非正規雇用、平均就労収入が200万円という厳しい状況にあったところに、コロナ禍での失業や収入減が追い打ちをかけた。「子どもに食べさせるために自分は食事を抜いたりする」「昼食を食べずに食費を節約し、量も減らしている」―シングルマザーを支援する「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」には、今も切実な声が寄せられている。
こうした状況をもたらした要因の一つは、90年代後半からの規制緩和による非正規雇用の増大と、その多くを女性が占めてきたことである。特に、コロナ禍で打撃を受けた飲食業や宿泊業では、就業者の過半数が非正規雇用の女性となっている。彼女たちは「雇用の調整弁」とされ、時短営業や移動の自粛が始まると真っ先に職を失った。
さらに、女性が家事・育児などの家庭内無償労働を主に担うという性別役割分業が固定化していることも、コロナ禍の女性の貧困・格差をもたらした一因である。OECDの国際比較によれば、日本では女性が男性の5.5倍もの家庭内無償労働を担っており、先進諸国の中で男女差が最も大きい。そのため、多くの女性は、臨時休校やステイホームの呼び掛けで家事・育児等の負担が増すと、勤務の継続や失業後の再就職が著しく困難となった。
コロナ禍により生じた女性の貧困・格差は、日本社会のジェンダー不平等の構造が顕在化したものといえる。政府は即時に、子育て世帯への給付にとどまらず、支援金の給付など困窮者への対策をとるべきである。さらに長期的な対策として、非正規労働者の正規への転換、非正規労働者の処遇改善と共に、長時間労働を是正して男女ともに働きやすい勤務環境を実現しながら、性別役割分業を解消することが必要である。そのためにも、政策決定過程に女性の参加を大幅に増やし、あらゆる対策にジェンダー平等の視点を盛り込むことも重要だ。