※保団連は5月31日に抗議声明を発出しました。PDF版はこちら
2022年5月31日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
マイナンバーカードの保険証利用等に係るシステム導入の義務化に反対する
~「骨太の方針2022」原案をめぐる報道について~
報道によれば、政府は2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)において、2023年4月以降、医療機関等でのマイナンバーカードの保険証利用(マイナ受付)等に係るシステム導入を義務づけるとともに、24年度中には健保組合等の保険者が健康保険証を発行するかを選べる制度の導入を目指すことを盛り込むとしている。将来的に健康保険証の「原則廃止を目指す」方針も明記するとも報道されている。
25日の社会保障審議会(医療保険部会)では、厚労省から、報道内容に沿った形で2023年4月からのマイナ受付等導入の義務化に向けた提案が示され、今後マイナ受付導入ペースを月1.5万件、10月以降は月1.9万件に倍増させていくとしている。
1.マイナ受付等導入の義務化は撤回すべき
現行の保険証提示による資格確認において、公的医療保険制度への信頼を維持し、制度を安定運営していく上で、これまで本人確認含め特段の支障や問題などは報告されていない。問題の一つとされる資格過誤等による請求レセプトの返戻については、基本的に医療機関に責めはない以上、保険者間で調整すれば済む話である。
他方、マイナ受付の導入・普及は、医療現場において、ICT機器に不慣れな利用者への手助け、マイナンバーカード紛失等のトラブル増や日々のシステム運用管理はじめ様々な負担増が懸念される。
患者・国民にとってのメリットも、「マイナンバーカードを持っていれば、保険証がいらない」程度である。マイナ受付に際して「受診時に投薬履歴や健診データが閲覧できる」との指摘もあるが、保険証(被保険者番号)によるオンライン資格確認でもシステム上は可能であり、保険証による受診の場合でも医療情報閲覧を認めれば済む話である。
医療機関へのマイナ受付導入の義務化には多額の費用が必要である。保険証利用のマイナポイント費用も予算は7,000億円を超える。医療現場の実情や要求、患者・国民の要望によって導入されたものではないマイナ受付事業に、多額の税金をつぎ込む無駄遣いは中止すべきとともに、マイナ受付等導入に係る義務化は撤回すべきである。
2.マイナカード取得義務化になりかねない
被保険者に関わって、まずは保険者による保険証発行の選択制を導入するとしているが、被雇用者・行政サービス受給者はじめ加入者に対して、保険者・雇用者から、マイナンバーカードを取得するようこれまで以上に強い圧力がかけられていくことが危惧される。
更に、保険証が原則廃止ともなれば、マイナンバーカードを持たない者は、公的保険診療が受けられなくなる。保険証の原則廃止は、事実上、マイナンバーカード取得の義務化であり、マイナンバーカード取得は任意とする法令に明らかに抵触するのみならず、プライバシー権など憲法違反の疑いも強いものと言わざるを得ない。
3.保険証の原則廃止は非現実的
マイナンバーカードを日常的には持ち歩かずに大切に保管している人も多い。そうした人に医療機関への持参を強要することはできない。保険証の廃止は非現実的であり、マイナンバーカードを保険証として使うかどうかはそれぞれの患者の任意にせざるを得ない。
厚労省は、保険証の廃止後も「加入者の申請があれば保険証は交付される」(社保審、5月25日)としているが、保険者に申請意向を確認する実務負担を課す必要はない。保険証は原則交付してマイナンバーカードの利用は任意とする形がもっとも簡便かつ合理的である。
患者・国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、政府・厚労省に対して、医療機関におけるマイナ受付等に係るシステム導入の義務化、保険者における保険証発行の選択制導入や保険証の原則廃止などについて中止・撤回することを強く求めるものである。