【要望書】児童・生徒の健全な発達を求める

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厚生労働大臣 後藤 茂之 様

文部科学大臣 末松 信介 様

2020年学校健診後治療調査結果を踏まえた

児童・生徒の健全な発達を求める要望書

2022年7月4日

全国保険医団体連合会

地域医療対策部

医科部長 細部千晴

 歯科部長 小山田榮二

 

日頃の教育確保へのご尽力に敬意を表します。

私たち全国保険医団体連合会の地域医療対策部は、2018年度に続き2020年度学校健診後治療調査(以下、2020年度調査)を実施し、全国の児童・生徒が抱える問題として、「要受診」なのにもかかわらず“受診できない状況”があることを明らかにしました。

本会が行った調査では、歯科、眼科、耳鼻科、内科別に結果をまとめました。2020年度調査では、新型コロナウイルス感染症拡大が起こった結果、2018年度調査に比べて調査対象の歯科、眼科、耳鼻科、内科の全科において未受診率が増加しました。また、新型コロナウイルスの感染リスクがあることを理由に、健診日に学校を欠席する児童・生徒もいたとの報告もあります。

未受診の背景には、「健康状態に対する親の理解不足」「共働き」「経済的困難」「ひとり親家庭」「無関心」などがあり、健診後の受診に繋がらない児童・生徒は、家庭に何らかの問題を抱えていることは明らかです。未受診の児童・生徒の健康を心配する養護教諭の声は多く寄せられました。2020年度調査では、不登校児童・生徒の増加があったとの回答は20.8%に上りました。学校健診後に「要受診」の結果となり、学校から治療の勧めがあるにもかかわらず、未受診のまま日常を過ごすことにより、児童・生徒の健康が損なわれていることが非常に危惧されます。2020年度調査の結果から、患者窓口負担があることによって受診ができない状況があること、学校が必要な受診を促し続けることや医療機関と養護教諭との連携を含む地道な働きかけが実際の受診行動に結び付いていることも明らかになりました。こうしたことから、下記の項目を要望します。

 

 

1.未受診を「自己責任」とせず、受診しやすい環境を整えること

新型コロナウイルス感染症が広がっている中だからこそ、学校健診で要受診と診断された場合には積極的に医科・歯科医療機関を受診し、精密な検査及び治療を受ける必要がある。

特に成長期に当たる子どもたちの受診を妨げる下記の要件は早急な改善が必要である。

① 国の制度として、18歳までの医療費を無料とすること。

② 小学生以下のこどもが医療機関を受診する必要がある場合は、診察に付き添う人は、別途有給休暇が取得できるようにすること。中小企業における当該有給休暇による損失については国が補填すること。

 

2.眼鏡・補聴器購入に対する補助制度を拡充するとともに、歯科矯正については、下記③においては、保険適用とすること

① 裸眼視力0.7以下では、眼鏡による補正が必要になると言われている。弱視・斜視、先天性白内障術後については補助制度があるが、裸眼視力0.7以下についても補助制度の対象とすること。

② 中等度・軽度難聴も学業には影響がある。重度難聴については補聴器による補助制度があるが、中等度・軽度についても補助制度の対象とすること。

③ しっかりと噛めることは、子どもの成長にとって重要である。歯科矯正は、厚労省が指定する一部の疾患を除き原則自己負担での治療となっている。歯科検診において、機能不全に繋がる不正咬合で歯科矯正の必要があると指摘された場合は、保険適用とすること。同時に、歯科矯正医との連携を図る必要がある。

 

3.下記については、今後一層研究及び対策を講じる必要がある。

① 未受診者が多い理由は、経済的な問題か、理解不足なのか。この原因と解決方法について、学校関係者、医療関係者、保護者、自治体、政府などが様々な角度から掘り下げていく必要がある。

② 未受診が、どのような身体的な影響を及ぼし、人生にどのような影響があるのかについても調査・研究が待たれる。

 

4.学校における健康教育の充実及び保護者への理解の周知を

① 学校において、口腔や全身の管理の重要性などの健康教育を行うこと

② 養護教諭は複数体制とすること。

③ 保護者への理解を求める取り組みを国、自治体としても取り組むこと。

 

5.新型コロナウイルス感染症による子どもたちの心身への影響の把握と対策の一層の推進を図ること

① 心の病気を心配する養護教諭からの指摘が多く、早急な対応が求められる。

② マスク着用の結果、口呼吸になることによって口腔内のみならず全身への影響が懸念される。

 

6.すみやかに全国調査を行うこと

今回の調査では、新型コロナウイルス感染拡大によって、全国30道府県の小学校、中学校、高校、特別支援学校において、「要受診」とされても必要な受診ができない児童・生徒が存在することが明らかになった。文部科学省による「学校保健統計調査」は、統計法に基づく基幹統計調査を行っている。しかし、実際に「要受診」となったものの、受診できなかったものについては、この統計調査では拾い上げることができない。養護教員からは本調査については、「教育委員会を通じてメールで依頼した方が良い」との声や調査回答にあたっては大変な事務負担となったとの声も寄せられた。先ず、国や自治体が調査を行い、未受診をなくすことが求められる。