【要望書】全ての医療機関が診療継続できる実効性ある措置を オンライン資格確認義務化の除外・経過措置を求める

全国保険医団体連合会では、以下の要望書を首相、厚労相、デジタル相に提出しました。

要望書PDF

補足説明PDF

内閣総理大臣 岸田 文雄 様

厚生労働大臣 加藤 勝信 様

デジタル大臣 河野 太郎 様

 

 

2022年11月15日

全国保険医団体連合会

【要望書】全ての医療機関が診療継続できる実効性ある措置を

オンライン資格確認義務化の除外・経過措置を求める

 

オンライン資格確認導入に向けて、「療担違反取消」発言や療担改正告示などの威圧、ベンダー事業者による事業完了期限を楯にした補助金超えの見積り押付け、更には「24年秋に保険証廃止」会見による脅迫などを通じて、カードリーダー申し込み医療機関数は9割、準備完了数は4割、運用開始数は35%(7.5万施設)に達している(義務化対象施設に対する割合、10月23日時点)。しかし、厚労省が掲げた9月末に全体の5割(11.5万施設)の導入を目指す中間目標にも及んでおらず、23年3月末に9割超で導入の義務付けは明らかに不可能である。とりわけ、運用開始した医科診療所は24%、歯科診療所も27%に過ぎず、23年4月に各々96.5%、91.4%での運用開始はあり得ない。

 

必要性ないが義務化で導入が9割 

システム費用は半数近くで補助金超過

 

オンライン資格確認導入が進まない背景の一つには、医療機関にとって対応が困難、要不要判断が分かれるなど相応の事情がある。本会が実施中の「保険証廃止・オン義務化意識・実態調査」(速報、4747名)からも、必要性も不確かなシステムを持ち出し覚悟で導入を強いられている状況が改めて浮き彫りになっている。

オンライン資格確認導入を準備中(見積もり、契約等)とした医療機関は、その9割超が「必要性はないが、義務化されたから」と回答した上、▽23年3月末までに「導入できるか不明」 が48%、「導入できない」が4%など不透明な状況にあり、大きなストレスとなっている。運用開始済みの医療機関も含めて、見積り・契約金額では▽「補助金の範囲内だった」42%、「補助金を上回った」が39%、となるなど、半数近く医療機関に相当の持出しが発生している。

 

導入しない・できない理由

「情報漏洩、セキュリティ対策が不安」

「小規模、高齢・閉院予定」

 

同様に、オンライン資格確認を導入しない/できないと回答した医療機関では、▽対応が困難な理由に関わって、「レセコンや電子カルテなどの改修で多額の費用が発生する」が67%、「情報漏洩やセキュリティ対策が不安」が65%、回線整備に関わり「オンライン請求をしていない」が57%、「整備費用が補助金を上回る」が50%、「対応できるスタッフがない、少ない」が50%などである。▽導入する必要性が低い理由に関連して、「高齢で数年後に閉院予定」が48%、「レセプト請求枚数が少ない」が41%、「レセプト返戻枚数がわずか」が35%などと一定数を占める。本会を構成する保険医協会の複数の調査でも、自院が義務化された場合、高齢世代を中心に医師・歯科医師の1割が閉院・廃院を検討している。

 

運用開始の4割で不具合・トラブル

「有効な保険証が無効となるが6割」、「カードリーダーの不具合が4割」

 

既に運用を開始した医療機関の4割で不具合・トラブルが発生しており、具体的なトラブルは6割が「有効な保険証が無効と表示される」、4割が「カードリーダーの不具合」であった。こうしたトラブル・不具合が生じた場合、現状では、保険証で資格確認し、保険診療を実施している。しかし、保険証が廃止され、被保険者情報が券面に記載されないマイナ保険証に一本化されれば、トラブル・不具合を防ぐことは困難となり、事実上、保険診療が実施できなくなる恐れがある。また、オンライン資格確認を実施した医療機関では、被保険者の住所の過不足や氏名の漢字表示等のエラーが生じている。保険者情報のフォーマットの統一やデータベースが整備・改善がなされない限り、医療機関において保険請求時の実務負担を強いられることになる。こうした諸問題が解消されないまま、2023年4月に義務化を強行されればコロナ感染拡大で困難を抱える医療現場に多大な負担と混乱を招くことは必至である。

 

地域医療継続に向け実効性ある措置を

 

本会は、オンライン資格確認のシステム導入の原則義務化について撤回すべきと考えるが、少なくとも、オンライン資格確認導入の原則義務化に関わって、中医協では年末に地域医療に支障を生じる等「やむを得ない場合の必要な対応」を取るとしている以上、2023年4月以降も、全ての医療機関が医療提供を継続できる実効性を伴った措置を取ることは当然と考える。

国が推進する施策に医療機関が応じる以上、補助金が受けられない・補助金上限を超えた契約を甘受するなど医療機関に経済的負担が強いられることも問題であり、改善が必要である。

以上を踏まえ、本会は、以下の措置が早急に行われるよう強く要望するものである。

 

 

1.2023年4月よりのオンライン資格確認導入の原則義務化は撤回すること。

 

2.少なくとも、2023年4月以降も全ての医療機関が医療提供を継続できるよう大幅な経過措置・幅広の除外規定を設けるなど抜本的に見直すこと。

①全ての医療機関を対象に経過措置を設けること。

②開設者・管理者が高齢、数年後に閉院(継承を含む)などはオンライン

資格確認導入の義務化より当然免除とした上、以下に掲げたケース(例示)について

も除外すること。

(ⅰ)へき地・離島やビル開業等でネット回線整備が困難な場合(専用回線が敷設され

ていない地域、ベンダー事業者がいない、設備改修に多額の費用を要するなど)。

(ⅱ)レセコンや電子カルテ等改修で多額の費用を伴う、スタッフが少ない―などシス

テム導入に困難を抱える場合。

(ⅲ)レセプト請求枚数が少ない、レセプト返戻枚数がわずか、患者特性が限定される

単科を標榜、標榜時間が短い―などシステム導入する必要性が低い場合。

③電子媒体で請求しており、情報漏洩やセキュリティ対策に不安を抱えている医療機

関については、義務化を除外すること。(別紙補足説明)

 

3.少なくとも運用トラブル・不具合が解消されるまで2023年4月実施の義務化は延期すること

 

4.実態調査、公聴会、ヒアリング、パブコメを開催すること

年末の中医協答申に基づく再検討実施にあたり、厚労省として地域医療への影響やシステムの運用医療機関でのトラブル・不具合など十分な実態調査を行うとともに、パブリックコメント、当会含む関係団体等へのヒアリング、公聴会等を実施すること。

 

5.医療機関でシステム導入が実質無償で行えるよう、システム整備に係る補助金の要

件・運用に関わって、以下について早急に改善すること。

①少なくとも2023年3月末までにカードリーダーを申し込んだ医療機関については、23年3月末としているシステム改修等事業の完了期限(※補助申請期限も含め)を大幅に延長すること。

②システム整備に関わって、医療機関に持ち出しが発生しないよう補助金上限について

手当てすること。

③国は、ベンダー事業者に対して、医療機関との柔軟な契約交渉に応じるよう強力に指

導し、見積り額の是正・適正化を図ること。

 

以上