【談話】社保審介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」に対する談話

全国保険医団体連合会では、12月20日の社会保障審議会介護保険部会で「介護保険制度の見直しに関する意見」が取りまとめられたことを踏まえ、下記の談話をマスコミ各社に発表しました。[PDF:193KB]

2022年12月23日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

介護を必要とする人が、公的介護を受けられる制度の実現を求める

~社保審介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」に対する談話~

 

12月19日に開催された社会保障審議会介護保険部会で「介護保険制度の見直しに関する意見」が審議され、12月20日付で取りまとめられた。

最大の争点となった「給付と負担」については、①「65歳以上で一定所得がある人の保険料引き上げや、消費税引き上げに伴う低所得者対策強化としての追加公費の見直し」、「2割負担の対象拡大」、「多床室への室料負担の導入」の3つは2023年夏(骨太方針2023年)までに結論を出す、②「ケアマネジメントの有料化」と「要介護1・2の訪問介護・通所介護の総合事業への移行」は2026年度までに結論を出す、③「被保険者や受給権者の範囲」、「補足給付のあり方」、「3割負担の拡大」、「福祉用具貸与・購入のあり方」は期限を定めず、「引き続き検討を行うことが適当である」とした。

そもそも政府は、介護保険部会で「給付削減と負担増」を柱とするとりまとめを行い、2023年1月からの通常国会に介護保険法「改正」案を上程する予定としていたが、短期間に20万人を超える反対署名が集まるなど、国民と介護サービス担当者などの運動によって政府の当初の目論見を大きく崩すことができた。
しかし、今の到達点は、給付削減と負担増の決定を先送りにしただけである。給付削減と負担増を止めさせ、介護を必要とする人が公的介護を受けられる制度の実現に向けて、更に運動を強める必要がある。

介護保険は、発足時点から「低い国庫負担・企業負担」、「高い保険料と受給者負担」、「給付範囲の制限」、「低い介護従事者の処遇」、「自治体への責任の転嫁」という問題を抱えて出発した。その後、改定のたびに介護保険制度の拡充を求める声は無視され、制度の改悪が続けられた結果、現在の介護保険制度は、社会保障制度としての機能を著しく低下させている。とりまとめで示した検討課題は、介護を必要とする利用者とその家族に大幅な負担を強要するものであり、これらが実施されれば高齢者及び高齢者を支える人の生活は厳しくなり、医科・歯科医療の受診抑制が発生する可能性も高い。

介護保険部会は「介護保険制度の見直しに関する意見」について今後更に検討を行うこととなるが、そもそも介護保険部会の役割は、介護を必要とするすべての人に必要な介護を提供するための制度構築を議論すべきものである。今こそ、国民一人一人の拠出責任が脆弱であればあるほど、社会的扶養原理(国庫負担)を拡大するという社会保険制度の原理原則に立ち帰るべきである。

従って、高額な保険料と利用者負担のために利用したくてもできない人が大量にいることに対する調査と分析を行い、利用を阻んでいる保険料と利用者負担の軽減に対する検討を行うべきである。

また、コロナ対策や介護従事者の処遇改善の必要性の記述があるが、それを実現するためには、介護報酬の引き上げや財政措置の拡充が不可欠である。

更に、①ケアマネジメントの質の向上として「第9期介護保険事業計画期間を通じて、包括的な方策を検討する」、②介護情報の収集・提供等を行う事業は、保険料と公費の財源により実施する地域支援事業として位置付ける、③介護給付費の地域差改善と給付適正化は、相互に関係し合うものであり、一体として進めていくなど、看過できない記述がある。必要な介護が制限されないようしっかりと住民監視を行っていく必要もある。

「利用料2割負担の対象拡大」や「多床室への室料負担の導入」、「福祉用具の貸与・購入費の対象の変更」等については、介護保険法「改正」に盛り込まずに、介護報酬改定等で検討する動きもある。

以上を踏まえ、介護保険法「改正」及び2024年介護報酬改定について、下記の実現を、強く求めるものである。

一、 高額な保険料と利用者負担のために利用したくてもできない人が大量にいることに対する調査と分析を行い、利用を阻んでいる保険料と利用者負担の軽減に対する検討を行うこと。
一、 介護保険に対する国庫負担を大幅に引き上げること。
一、 利用者負担の拡大及びサービス削減は、中止すること。
①2割負担、3割負担の対象拡大を止めること。
②ケアプランの自己負担導入を止めること。
③施設多床室での室料徴収の拡大を止めること。
④要介護1、2の生活援助等の「総合事業」(地域支援事業)へ移行を止めること。
⑤被保険者の範囲の拡大を止めること。
⑥生活を圧迫する保険料引き上げは中止し、低所得者の保険料を引き下げること。
⑦施設入所時の食事・居住費負担軽減対象である低所得者の範囲削減を止めること。
⑧福祉用具貸与の範囲縮小を止めること。
一、 基本的な介護報酬の引き上げで、介護職員の処遇改善、職員配置の改善を実施すること。
一、 新型コロナ感染症対策として、検査・ワクチン体制の整備、在宅・施設での陽性者・クラスター対応への支援、事業所に対する公費による減収補填を実施すること。

以上