【要望書】健康保険証廃止法案の撤回を求める

 

健康保険証廃止法案の撤回を求めます

 

2023年2月21日

全国保険医団体連合会

会長 住江憲勇

デジタル庁は2月17日、現行の健康保険証を廃止し、マイナカードへの一本化に向けた「中間とりまとめ」を策定し、健康保険証廃止後の「資格確認書」の発行など法改正を含めた措置を示しました。健康保険証廃止を含む一括法案を今国会提出する構えです。当会は、公的保険制度の根幹である健康保険証を維持し、これまで通り医療が受けられるよう廃止法案の撤回を強く求めます。

 

健康保険証を廃止する理由は一つもない

政府は昨年10月、2024年秋に健康保険証を廃止する方針を表明したものの、世論の大きな反発を受けて、岸田首相は「マイナンバーカードを取得しない人でも保険料を払っていれば保険診療を受けられる制度を用意する」と答弁しました。

デジタル庁・検討会が2月17日に示した「中間とりまとめ」では、医療機関を受診する際は、マイナカードによるオンライン資格確認を基本とし、「介護が必要な高齢者や子どもなどマイナカードを取得していない人などが医療機関を受診できるよう、新たに資格確認書を発行する」としました。あくまで健康保険証は廃止する構えです。資格確認書の有効期間は最長1年とされ、発行には本人の申請が必要となります。記載内容は健康保険証と同様の情報(氏名・生年月日、被保険者等記号番号、保険者情報等)が記載されており、健康保険証を廃止する理由は一つもありません。

 

発行申請漏れで無保険扱いも

健康保険法では、保険料を支払っている被保険者に対して保険者が健康保険証を発行することが義務付けられています。保険者の責任で、健康保険証が遍く国民に届けられることは、国民皆保険制度の大前提です。「中間とりまとめ」では、マイナカードによる資格確認を基本としていますが、マイナカードの取得は「任意」で資格確認書も本人の申請に基づき「任意」で「1年限定」となると、保険料を適切に支払っている被保険者でも申請漏れ等により、医療機関窓口で「資格喪失」や「無保険」扱いとなることが懸念されます。

 

膨大な社会的コスト

資格確認書を申請・交付する際の手間が新たに発生し、自治体窓口や各保険者の事務対応も増加するなど膨大な社会的コストが生じます。政府は、マイナカード取得の「メリット」を強調しますが、取得や利用が困難な患者・高齢者・家族にはさらなる負担となります。デジタル庁調査(1月末)でもマイナカードの健康保険証として利用申込するきっかけは、89.1%が「マイナポイントがもらえるから」と回答しており、「保険証利用にメリットを感じたから」はわずか11.6%に過ぎません。患者・国民は、健康保険証をわざわざ廃止してマイナカードへの一本化することを求めていません。保団連調査(昨年10月実施8707件)でも、医師・歯科医師の65%が保険証廃止に反対しており、賛成はわずか8%。また、7割以上が「システム障害や災害時対応」、「窓口対応や紛失トラブルの増加」などデメリットを訴えています。これまで同様、健康保険証は原則交付、マイナカード利用は「任意」とする形がもっとも合理的であり、国民の多くが望まない健康保険証の廃止方針や廃止法案の提出は中止すべきです。下記事項を強く求めます。

 

 

一、現行の健康保険証を廃止する法案を国会に提出しないこと