【声明】
2023年4月20日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
物価高騰、年金目減り、窓口負担2割化で、高齢者の受診控えが深刻化
後期高齢者医療制度の保険料引き上げは撤回を
4月13日の衆議院本会議で、後期高齢者医療制度の保険料引き上げを含む健康保険法等「改正」案が自民党、公明党、国民民主党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。
法案は、年金収入が153万円を超える75歳以上の保険料を収入に応じて引き上げ、年間上限額も66万円から80万円に見直す。また前期高齢者(65~74歳)の医療給付費を保険者間で調整する仕組みにおいて、報酬水準に応じて調整する仕組みを導入する。高齢者を狙い撃ちしつつ、相対的に所得が高い勤労者に保険料負担増を強いる一方、国費(税金)は今回の法「改正」全体で910億円も削減される。国民皆保険制度における国の財政責任を後退させるものであり、断じて許されない。参議院での徹底審議を求めるとともに、高齢者の生活、健康を脅かす後期高齢者医療制度の保険料引き上げは撤回することを求める。
後期高齢者4割で負担増
後期高齢者の保険料について、出産育児一時金増額の財源負担に加え、後期高齢者と現役世代の支援金の伸び率(1人当たり)が同じになるように見直した上、高齢者内の「能力に応じた負担を強化する」として所得割の比率を引き上げる。年収153万円以上から保険料負担増となり、後期高齢者の4割が該当する。
また、出産育児一時金について50万円に引き上げる一方、財源は、現役世代(74歳以下)が加入する保険料の上乗せに加えて、新たに後期高齢者が一時金全体(公費除く)の7%分を負担する形にする。
全体の制度改定を通じて、後期高齢者1人当たり平均で保険料は年5,200円増(2025年度)と試算される。別途、高齢化等に伴う保険料・年4,300円増(2024・25年度)の上乗せが予定されるため、1人当たり・計1万円近い負担増となる。
国費の抜本的投入には背を向けながら、低年金・低所得者が多い後期高齢者に過酷な負担増を強いる法案となっている。
2割化の影響で受診控え
当会が行ったアンケート調査では、「経済的理由による受診控え」が「あった」との回答が、75歳以上2割負担の人で17.2%あった。すでに2割化の影響による「受診控え」が起きていると考えられる。アンケートには「老人は早く死ねということか」「(2割負担になり)歯科受診をやめた」など悲痛な声が寄せられている。年金が目減りし、物価高騰などによって高齢者が生活費を極限まで切り詰める中、窓口負担増、保険料増で、受診抑制を強いる国の姿勢には憤りを禁じえない。また、2割化を強行した上に、国会附帯決議(参議院厚生労働委員会採択)で求めた高齢者の受診に与える影響の把握すらしないままに、後期高齢者医療制度の保険料を引き上げるなど言語道断である。
あらためて健康保険法等「改正」案について、参議院での徹底審議を求めるとともに、高齢者の生活、健康を脅かす、後期高齢者医療制度の保険料引き上げは撤回することを求める。