原発の60年間超の運転期間の延長などを認める 束ね法案の衆議院可決に強く抗議する

2023年5月1日

全国保険医団体連合会

公害環境対策部

部長 野本 哲夫

岸田政権は4月27日、原発の60年超の運転期間の延長などを盛り込んだ束ね法案「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」を、衆議院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決し、参議院に送致された。

この法案は、東電・福島第一原発事故の反省と教訓を投げ捨て、原発回帰、原子力政策の推進を鮮明にし、原子力産業を擁護・支援するもので、政府がお墨付きを与える最悪の内容である。5つもの法律を束ねた法案にすることで、当初よりまともな審議もせず、現に問題として指摘された事項への答弁も解明も行われず、わずか1か月足らずで衆議院を通過させ、参議院に送致された。

東電・福島第一原発事故の収束の見通しもなく、束ね法案には原子力基本法(原子力利用上の憲法と呼ばれている)が含まれ、「原発活用によって電力安定供給や脱炭素社会を実現されることは「国の責務」と明記して、巨大地震や災害、テロ、軍事攻撃など原発問題の放射線災害の危険から国民と自然環境を守る国の責務を放棄することに等しく、原子力利用を国が推進することを方針としたことも重大である。

岸田政権の今回の参議院送致で、①原発運転期間の原則40年、最長60年を限度とする方針を維持した上で、再稼働審査や行政指導などによる停止期間を運転年数から除外、その期間について60年を超える運転を可能にすることで、運転中止期間の上乗せによる経年劣化による危険性はさらに増大する。②運転期間の規制するルールの所管を経産省に移管するなど原子力利用規制の分離を瓦解させるもので決して許されない。③使用済み核燃料と高レベル放射性廃棄物に関する最終処分方法が未確立で、既存の保管・貯蔵量も上限に達しようとする中で、地域や国民の反対に背を向け、地層処分等を地方への一方的な押し付けを政府が強行しようとしている。④さらに脱炭素の加速化が叫ばれている中で、岸田「GX(グリーントランスメーション)実行方針」を、世界各国で取り組まれている気候温暖化対策と並行することは明白である。

原発を廃止し、危険を除去していくことは政府の最大使命である。原発の再稼働、新増設、原発の稼働期間の延長など言語道断である。岸田政権の今回の衆議院可決に強く抗議し、「脱炭素電源法案」(束ね法案)の撤回を求めるものである。

いのちと健康を守ることを使命とする私たち医師・歯科医師は、原発ゼロ、再生可能エネルギー政策への転換と推進を強く求めるものである。            以上