2023年10月3日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
厚労省分析で後期高齢者の窓口負担「2割化」による受診控え明らかに
75歳以上窓口負担「2割化」は直ちに1割に戻すことを求める
「2割化」の影響で受診控え明らかに
厚労省は9月29日の社保審医療保険部会において、昨年10月からの「後期高齢者医療の窓口2割負担導入の影響について」の分析結果を公表した。これは参議院厚生労働委員会で「2割化」法案が採決された際の附帯決議に基づき実施されたもの。
分析結果によると2割負担が導入された2022年10月以降、2割負担の人の受診日数(月)は落ち込み、1割負担の人の受診日数(月)よりも低位で推移している。「2割化」前(22年4~8月)と後(22年11月~23年3月)の受診日数の比較では、2割負担の人の受診日数は1割負担の人に比べて▲0.10日(変化率換算▲3.1%)の差があった。これについて厚労省は、▲2.0%~▲4.1%に大勢(約95%)が収まっていることから、当初想定した「長瀬効果」の影響見込み(▲2.6%)の幅内とした。しかし、そもそも受診抑制を前提に負担増が行われたこと自体が大きな問題であり、今回の分析で2割負担導入に伴う受診抑制(長瀬効果)が検証されたことになる。
外来負担増を月3千円以内に抑える「配慮措置」が行われているにもかかわらず、受診控えが発生していることも深刻である。さらに、今回の数値は受診した患者の平均値であり、「2割化」の対象とされた「単身で年収200万円以上、複数で年収320万円以上」をぎりぎり超える層の人や、複合的な慢性疾患を抱え通院回数が多くなる患者ほど、受診抑制が増幅していることも危惧される。「生計収支に余裕があるから、窓口負担増の吸収は可能」、「配慮措置を講じており必要な受診は妨げられない」などの国の議論は誤りであったことは明白であり、後期高齢者の医療費窓口負担「2割化」はただちに1割に戻すべきである。
保団連調査では、診療内容上の受診手控えも
当会が行ったアンケート調査でも、「経済的理由による受診控え」が「あった」との回答が、2割負担の人で17.2%、1割負担の人は12.8%であった。さらに、「検査・薬などを減らした」は2割負担の人で10.3%、1割負担の人で7.3%あった。厚労省の分析は受診日数のみに注目しているが、投薬・検査・処置など診療内容上での手控えも懸念される。
また、当会の調査からも、相次ぐ年金引き下げ、物価高騰、医療・介護の費用負担等の影響を背景に1割負担が維持された高齢者でも受診抑制が起きている中、2割負担により受診抑制がさらに悪化したというのが実態だと言える。
この10月1日から新型コロナウイルス感染症の検査・治療に対する公費負担がさらに縮小された。2割化の影響と相まって、経済的理由による治療控えも懸念される。
状態が急変しやすく、重症化リスクが高くなる高齢者の命と健康を守るため、きめ細かな受診の機会を保障する窓口負担軽減こそが必要である。
さらなる医療・介護の負担増は言語道断
政府の医療・介護の負担増はこれに留まらず、24年度からは後期高齢者の保険料が段階的に年間1万円近く引き上げられる。また、介護保険においても利用者負担2割の対象拡大など大幅な負担増が狙われている。すでにこれだけの受診控えが起きている中、さらに高齢者を医療や介護から遠ざける負担増は言語道断である。後期高齢者の保険料引き上げを中止すること、介護の利用者負担増などさらなる医療・介護の負担増を行わないことを求める。