2023年10月6日
全国保険医団体連合会
公害環境対策部長 野本哲夫
「ノーモア・ミナマタ近畿第2次訴訟」大阪地裁判決を歓迎する(談話)
大阪地裁は9月27日、「ノーモア・ミナマタ近畿第2次訴訟」について、国、熊本県、加害企業チッソに損害賠償等を命じる判決を下した。本件裁判は、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」(以下、特措法)に基づく救済から「非該当」と救済を拒まれた近畿地方などの被害者ら128人が提訴したもので、達野ゆき裁判長は特措法の対象地域外の原告、年代外の原告、特措法未申請原告全員を「水俣病」と認定し、一人当たり275万円、総額3億5200万円を支払うよう命じた。本件判決では、メチル水銀に汚染された魚介類を多食すれば、水俣病が発症する可能性があるとしと認定し、メチル水銀曝露から長期間経過後に発症する遅発性水俣病の存在を認め、特定の年数をもって発症時期を限定することはできないと断じ、賠償請求権が消滅する20年の除斥期間についても、原告らは経過していないとし認定した。今回の判決は、「特措法」による①一時金の申請を3年以内に限定したこと、また「特措法」が対象とした②チッソ水俣工場がメチル水銀を含む排水をした水俣湾周辺に1年以上居住、③排水が止まった翌年の1969年11月末までの生まれなどの線引きによって、患者を切り捨ててきたこと、の誤りを厳しく断罪するものとなった。特措法には、「あたうかぎりの救済」(第3条)や、「(被害の全容について)調査研究」(第37条)を積極的かつ速やかに行い、その結果を公表することなどが定められている。それにもかかわらず法の精神や規定が十分かつ一貫して実行されずに今日に至る問題があった。被害実態を把握せず、実相も明らかにしないまま収束が図られれば、未確認の患者を取り残す恐れが極めて大きく、国は水俣病が疑われる地域全てにおいて健康調査を行うことが必要不可欠である。速やかに実行するよう要求する。今般の「ノーモア・ミナマタ近畿第2次訴訟」は、従来の水俣病救済策の根本的転換を迫るものとして大阪地裁判決を歓迎する。国が拒んできた不知火海沿岸全域の健康調査を行ってこそ、全ての被害者を救済できることを示している。
当会は患者、国民の命と健康を守る医科・歯科保険医の団体として、引き続き全ての水俣病被害者が救済されるまで国、熊本県、加害企業チッソに対し救済と賠償を求めていく。