厚生労働大臣 武見敬三殿
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
賃上げ対応と入院食に係る診療報酬の引き上げを求める
貴職が国政に果たされます重責に敬意を表します。
2024年度診療報酬改定をめぐる予算折衝が本格化されます。コロナ危機による医療現場の疲弊を修復するとともに、働き方改革やセキュリティ対策はじめ良質・安全な医療を確保していく上で、医療従事者の確保・雇用改善が何より求められます。本会は診療報酬の大幅な引き上げを求めていますが、以下、緊急性を増す医療従事者への賃上げ対応と入院食に関わって、改定に際してご考慮いただきたい点について要望します。
労働環境維持には薬価財源充当が最低限必要
2022年度改定以降(22~23年度)の物価上昇率は5~6%と見込まれており、我が国最大の労働組合(日本労働組合総連合会)は春闘に向けて「5%程度の賃上げ」方針を掲げました。診療報酬(公定価格)を経営原資にする医療機関において賃金を5%相当引き上げるには、診療報酬改定率で約2.4%(医療費ベース・1兆円弱)が必要になります(医療費の動向、医療経済実態調査より試算)。少なくとも、物価上昇に応じた賃上げを行うだけでも、薬価改定・材料改定に伴う財源(約5千~6千億円)は全て診療報酬(本体)に振り替えた上、追加財源を投入することが必要です。加えて、一般労働者の報酬水準に引き上げるため、改定率のさらなる上乗せが必要と考えます。
入院食は赤字を解消し、患者負担増は回避すべき
とりわけ、入院食費用(入院時食事療養費:1日3食・1,920円)は事実上30年以上据え置かれており、病院の給食部門は赤字が続き、経営を逼迫しています。日本メディカル給食協会の試算では、病院側の必要経費は1日(1人あたり)平均2,280円に増えており、全体(平均)で360円が赤字です。小規模病院(50床未満)では、必要経費は3,305円に及びます。入院時食事療養費(設定金額)は長年据え置かれてき一方、そのうちの患者負担額(一般所得区分)は2016、18年度に連続して値上げされてきました。入院に伴う収入減、治療の一環としての入院食の特性から、患者が安心して入院医療を受けられるよう、患者負担増は避けることが必要です。給食部門の赤字解消に向けて入院時食事療養費を引き上げることが急務ですが、あわせて患者負担額(高額療養費の支給対象外)が増えないように対応することが不可欠です。以上を踏まえ、以下の2項目について要望いたします。