【声明】
医療現場のトラブルは未解決のまま、健康保険証の「廃止」強行宣言に抗議する
2023年12月12日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
岸田文雄首相は12月12日の「マイナンバー情報総点検本部」において、現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する「マイナ保険証」への移行について、当初の予定通り2024年秋に健康保険証の廃止を強行することを表明した。
医療現場のトラブルは続いており、問題は解決していない
しかし、医療現場では10月以降もトラブルは続いている。全国保険医団体連合会が行っている「10月以降のマイナ保険証トラブル調査」の一次集計(回答数1000件)では、10 月 1 日以降に「資格情報の無効」「名前・住所の間違い」「負担割合の齟齬」などマイナトラブルがあったと回答した医療機関は約6割に及んでいる。また、8割超が健康保険証によりトラブルに対応をしており、「健康保険証を残すべき」との意見は8割を超えている。
少なくとも医療保険に係る「総点検」では現場のトラブルはなんら解決しておらず、「問題が無い」と判断できる状況にはない。このような状況で現行の健康保険証の廃止を強行するとの表明は言語道断であり、強く抗議する。
国民は「マイナ保険証」への不安で利用せず
岸田首相は国民の「不安払拭」を強調してきたが、トラブルへの対応は弥縫策ばかりで、問題の全容解明・再発防止は放置してきた。その結果、国民の不安は払拭されず、医療現場の「マイナ保険証」利用率は5%を切る状況が続いている。こうした政府の無責任な対応も背景に、内閣支持率も下落している。
「不安払拭」というのであれば、国民が信頼を寄せ、長年安定的に運用されてきた健康保険証を存続させる決断こそが求められる。
国民の受療権を保障する健康保険証は存続を
病気やケガの時にすべての国民が安心して医療が受けられるようにするためには、すべての国民に遅滞なく健康保険証を発行・交付することが必要・不可欠である。現行の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に一本化してしまえば、申請の漏れや遅れ、行政手続き上のタイムラグ、医療現場でのマイナトラブルなど様々な要因によって「無保険の状態」を作りだしてしまうことは避けられない。国民の受療権を保障するため、改めて現行の健康保険証の存続を強く求める。