歯科医療機関 売上減続く中、経費増の二重苦 厚労省調査でも明らかに(医療経済実態調査)

 

2023年12月6日

全国保険医団体連合会

政策部長(歯科)池 潤

 

歯科診療所コロナ補助金含めても医業収益マイナスに

歯科医療守るため今こそ診療報酬の大幅増を

第24回医療経済実態調査について(歯科談話)

 

はじめに

2023年11月24日に「第24回医療経済実態調査」結果が報告された。特に歯科部分について、全国保険医団体連合会・政策部(歯科)として、下記のとおり発信する。

今回の調査結果では、この間のコロナ禍による患者減少や感染対策費用の増加により、多くの歯科医療機関ではコロナ補助金を加えても非常に苦しい経営が続いていることが明らかとなった。

全国に約6万7千超ある歯科医療機関のうち、約8割は個人診療所である。しかし、調査結果では個人立の歯科診療所の施設数は281に止まること、こうした調査に協力可能な歯科医療機関は比較的経営余力のある場合が多いことを踏まえると、歯科医療機関の経営実態は、調査結果の数字以上に厳しいものと推察される。

これに加えて、今後はオンライン資格確認義務付けに伴う費用増なども見込まれることから、歯科医院経営はさらに厳しくなるものと想定される。

 

1.歯科個人立診療所 収入減続く中、経費だけ増加

歯科個人立診療所の医業収益は、金額の伸び率は▲1.6%となった。特に、経営の根幹である「保険診療収益」で▲0.2%、自費部分に該当する「その他の診療収益」も▲4.9%となった。

費用面では、給与費は0.5%の伸びがあり、医業収益が下がる中でも、賃上げ要請や人材確保のために、給与費を何とか確保し増やそうとする歯科医療機関の努力が伺える。

医薬品費や歯科材料費の伸び率もマイナスとなっており、特に歯科材料費は▲8.2%となった。これは、医業収益の全ての項目が減少していることと併せて考えると、来院患者の数じたいが減少していることが推定される。

金額として多くはないものの、水道光熱費の伸び率も12.6%あり、昨今の燃料費高騰の影響が見られる。

 

2.損益率・損益差額とも減少 歯科全体が地盤沈下

こうした中で損益率は前回の28.1%を更に下回る25.9%(コロナ補助金を入れても26.2%)となった。コロナ前の2019年度は29.7%、2018年度は28.4%だったことを踏まえると、損益率はコロナ前の水準にすら戻っておらず、厳しい経営実態がますます悪化して、さらにそこから脱する見込みも立たずにいる。

損益差額の平均値を見ると1223万円であり、前年(2021年度)比95.9%となっている。さらに、中央値を見ると、916万円であるが、これは前年(2021年度)比84.6%の数値である。平均値と比較して中央値が大幅に減少していることから、下方推移が進んでいる可能性が伺える。

 

3.最頻値階級 全体的な低位推移は変わらず

損益差額階級別施設数を見ると、個人立では「500万円以上~750万円未満」が最も多く、最頻値(48施設)となった。前回調査では、最頻値が「250万円以上~500万円未満」であり、結果としては前回から階級がひとつ上がった格好となった。

しかし、「~500万円未満」までで全体の25.6%、「~750万円未満」までで全体の42.7%を占め、全体的に低位に推移している状況は変わっておらず、依然として歯科医院の厳しい経営状況から脱していない。

歯科の地域医療を守るためには、歯科診療報酬の大幅引き上げこそが唯一の解決策である。

 

歯科診療所(個人立)

医業
収益
医業・介護費用 損益比率
()内は21→22年
コロナ関連補助金を
含んだ損益比率
()内は21→22年
給与費
歯科診療所(個人立) ▲1.6% +0.1% +0.5% 25.9%(▲0.8%) 26.2%(▲1.4%)
最頻値 ▲3.9% ▲2.4% +0.6% 20.4%(▲0.6%) 21.1%(▲1.4%)

<注> 調査結果には、2023年3月末までに終了する直近2事業年(度)の数値、新型コロナウイルス感染症関連補助金を含む数値などが記載されている。なお、特に断りがない場合、伸び率等の比較は、2022年度において前年度(2021年度)と比較。

※新型コロナウイルス感染症関連補助金とは、重点医療機関体制整備、病床確保、感染拡大防止支援、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃支援給付金等を指す。自治体・系統機関も含む(慰労金は除く)。