医療・介護改悪を充てこむ「子ども・子育て支援法改正案」の廃案を求めます

         2024年4月25日

全国保険医団体連合会

                         会長 竹田智雄

医療・介護改悪を充てこむ「子ども・子育て支援法改正案」の廃案を求めます

 

育児休業給付拡充などを盛り込んだ「子ども・子育て支援法」関連法案が参議院で審議されています。今回の子ども・子育て支援策では、2028年度までに実施する少子化対策の「加速化プラン」に必要となる年3兆6千億円について、保険料上乗せ(支援金)や医療・社会保障カットや「特例公債」などを主要な財源として調達するとしています。本会は、保険料増、医療・社会保障カットはじめ問題が多い本法案について、廃案とするよう求めるものです。

 1.医療・介護負担増を充てこむ

経済財政諮問会議(4月2日)の資料では、子ども・子育て支援策に関わって、政府の「改革工程」(2023年12月閣議決定)で定めた医療・介護負担増を中心に取り組み、2028年までに1.1兆円の公費の削減を図るとしています【下段図・公費節減の効果】。

さらに、関連法案の附則第47条・48条では、財源のうち1.0兆円について、医療保険料上乗せや事業主の拠出金のほか、「改革工程」における「医療・介護制度等の改革」の検討結果に基づいた取組の「徹底を図る」としています【下段図・社会保険負軽減の効果】。

要は、1.1兆円以上に及ぶ財源を医療・介護カットで賄うというものです。

 

こども・子育て政策の強化(加速化プラン)の財源の基本骨格(イメージ)(参考資料)

※社会保障審議会(医療保険部会)資料(2024年3月14日、資料3)

2.医療・介護従事者の賃上げに逆行するもの

「改革工程」では、▽医療の3割負担者及び介護での2割・3割負担者の範囲拡大、▽先発品のある後発品の保険給付制限の更なる検討、▽高額療養費制度(患者負担上限額)の見直し、▽病床削減の推進、▽医療従事者間での負担のしわ寄せ(タスクシフト・シェア)▽要介護1・2の生活援助サービスの保険外しなど―患者・利用者、医療現場に大きな打撃・影響を及ぼす負担増が目白押しです。

異常な物価上昇が続く中にもかかわらず、診療報酬のネットマイナス改定、高齢者の2割負担導入はじめ医療等を中心に毎年1,600億円(平均)の歳出カットが行われてきました。人材確保状況(入職超過率)では、医療分野では0.0%、介護分野では-1.6%と危機的状況にあります。

1.1兆円以上の公費削減ともなれば、約900万人に及ぶ医療・福祉従業者の賃上げどころではなくなります。政府が重要政策として位置付ける賃上げに逆行するものです。

※中医協総会資料(2024年1月10日)

 

医療・介護負担増は、子育て世帯にも打撃を及ぼします。そもそも、子ども・子育て政策支援と医療・介護改悪は何の関係性もありません。国策である子ども・子育て支援策については、国が責任をもって医療・社会保障の財源とは別途に確保すべきです。

 3.「負担増ない」は理解得られず

本法案では、社会保険料に上乗せ徴収するなどで「子ども・子育て支援策」の財源の一部を賄うとしています。2026年度から始まり、初年度は6千億円、27年度は8千億円、28年度以降は1兆円を徴収する予定です。政府は、賃上げ、歳出改革などによって「国民に追加負担は求めない」と強調しますが、実質賃金は、岸田政権の下、2022年4月から低下し続けています。年金も実質削減が続いています。さらに、物価の上昇が襲いかかっています。「負担増は生じない」との主張に国民は到底納得しません。

 4.保険料上乗せは禁じ手

本来、育児給付を含まない「医療保険料」に上乗せ徴収するやり方が禁じ手というべきです。筋が悪い上乗せ徴収をした結果、保険者に応じて負担額が異なる説明がつかなくなった上、社会保険料負担の逆進性をさらに強め、格差を広げる形となっています。当然、子育て世帯でも個々の家計や状況に応じて、文字通り、負担増になるケースは出てくる上、子育てを終えた家庭にとっては給付なき負担にすぎません。厚労大臣も認めるように、2割負担化や後期高齢者医療保険料の引き上げを強いられる高齢者には負担増の追い打ちになります。

5.「保険制度化」で給付削減の正当化も

政府は、この間、介護保険制度などを見ても、給付の打ち切り、滞納制裁をしやすい保険制度をフル活用してきました。将来的には、子ども・子育て分野についても、「支援金」の適用分野拡大による既存の保育制度の全面的な「社会保険化」(保育保険制度)に移行していくことも懸念されます。保険料滞納によって保育・育児支援が打ち切られる制裁の発動にもなりかねません。

 6.重い教育費の負担軽減に踏み込まず

支援策のメニューにしても、児童手当の所得制限の撤廃は「子どもは社会が育てる」観点からも評価できますが、児童手当の高校生年代までの支給延長、妊娠・出産時の10万円相当給付、両親ともに育休取得した場合、手取り収入を支給(最長28日)、育児時の時短勤務中の賃金10%支給はじめ、「異次元の少子化対策」の看板倒れです。3歳未満児の短時間預かりを行う「こども誰でも通園制度」に至っては、保育士は半分の基準で良いなど子どもの安全確保が危惧されています。

高校卒業までの医療費の無償化、学校給食の無償化や高校授業料の完全無償化、学費や奨学金返済の軽減など、家計に重くのしかかる教育費の負担軽減には踏み出しておらず、少子化傾向の打開に向けた政府の本気度すら疑われます。

7.防衛費倍増よりも、子ども支援に財源投下を

そもそも、防衛費の前年比増だけで1兆1千億円であり、防衛費の倍増を中止すれば、支援金分の財源をつくることができます。本気で国の存続を考えるなら、「こどもファースト」「こどもまんなか」を財源でも貫くべきです。勤労者・高齢者への財源のしわ寄せではなく、金融資産家の優遇税制の是正や大企業の内部留保の活用こそ検討すべきです。以上を踏まえ、改めて本会は、医療・社会保障を削減し、国民に負担をしわ寄せする「子ども・子育て支援法」関連法案は廃案とするよう求めます。