「いのちのとりで」裁判原告勝訴の最高裁判決を重く受け止め、
国はただちに謝罪し、全面的な解決を
2025年7月15日
全国保険医団体連合会
会長 竹田 智雄
2013年から2015年にかけての生活保護基準の大幅な引き下げは違憲・違法であるとして訴えた「いのちのとりで裁判」について、最高裁判所は6月27日、「違法」との判断を示し、処分の取り消しを認める画期的な判決を言い渡した。当会は、この判決を高く評価するとともに、国に対し、判決を重く受け止め、すべての生活保護利用者に謝罪すること、ただちに2013年改定前の基準に戻すとともにその被害回復を図ること、再発防止に向けた検証と対策を講じることを求める。
最高裁判決は、2013年の基準引き下げが、従来の消費水準を指標とせず、専門部会にも諮らないまま物価変動を直接の指標として改定したことは、専門的知見との整合性を欠くことなど指摘し、生活保護法に違反すると断じた。10年以上もの間、違法な保護基準の下、数百万人の生存権を侵害し続けた国の責任は重大である。最大時1027名であった原告のうち232名がすでに亡くなっている。判決が出されてから2週間以上が経過するが、国はいまだ謝罪すらしていない。ただちに謝罪し、全面解決にむけた措置を早急にとるべきである。
違法な基準引き下げ強行の背景には、2012年の総選挙で自民党が「生活保護給付水準の10%引下げ」を公約に掲げたことにある。社会保障費削減のために結論ありきで制度改悪を強行する手法は、先の通常国会で狙われた高額療養費制度「見直し」など、公的医療保険制度においても行われている。今こそ命をないがしろにする社会保障費抑制政策そのものを転換すべきである。
生活保護基準は、国民の生存権を保障し、最低賃金、就学援助、国保料の減免基準など様々な制度と連動する社会保障制度の土台である。日本の生活保護捕捉率は15~20%と低く、生活保護を利用せず保護基準以下の状況におかれている人が多数存在する。生活保護制度を改善し、国の責任で生活保護を利用しやすくすることこそが求められている。
また、国は、社会保障制度を拡充し、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を確実に保障すべきであり、当会はその実現に向けて引き続き取組みを強めていく。