全国保険医団体連合会では、11月28日に発表された財務省財政制度等審議会の2023年度予算編成に向けた「建議」に対し、以下の声明をマスコミ発表しました。PDFはこちら[PDF:315KB]
2022年12月8日
厚生労働大臣 加藤 勝信 様
全国保険医団体連合会
政策部長(医科) 竹田 智雄
政策部長(歯科) 池 潤
【声明】財務省財政審「建議」について
感染拡大に無反省な公費抑制
財務省の財政制度等審議会は11月29日、2023年度予算編成に向けた「建議」を公表した。新型コロナウイルス感染症では第7波を超えると言われる第8波のピークが年明けにも懸念されているが、「建議」では重症者数の減少や治療薬の普及などを理由にして、財政出動(特例的な補助金、診療報酬など)の早急な縮小・廃止、PCR等検査キットの無料配布縮小など医療提供体制の確保を緩める提案をしている。コロナワクチン接種にしても、当初の特例的な措置(全額国費)の廃止は批判を受けて事実上取り下げたものの、依然「予防接種法上の位置づけについて検討」していくべきとして、実費徴収(有料化)への移行を促している。コロナ終息が見通せない中、医療提供体制への公的支出抑制は、感染拡大を繰り返してきた現状に無反省な主張である。
かかりつけ医機能「法制化」は現場に軋轢
医療提供体制再編に関わって、「かかりつけ医機能」について、コロナ自宅等療養者への対応不足などを理由にして、「法制化」を求めてきた議論は、医療界からの異論もありトーンダウンし、代わりに地域医療構想・地域包括ケアなど「法律」に定めた国策を早急に実現するため、「かかりつけ医機能」を有する医療機関を明確化した上、法律に規定するなど「法制化」して機能発揮を促すよう求めている。しかし、義務的な色彩を免れない「法制化」を梃子にしてかかりつけ医機能の強化を推し進めようとすれば、最も大切な医師と患者の間での信頼関係の構築が後景に退くとともに、マンパワーが恒常的に不足する医療現場に軋轢・矛盾を広げる事態となりかねない。機能などを「法制化」するのではなく、医療従事者の抜本的増員を進めて、現場に余力(溜め)を確保することこそが必要である。
「建議」では、75歳以上への窓口負担2割導入の影響なども省みず、高齢者の窓口負担・利用料や保険料増などを執拗に主張している。コロナ感染が長期化し、物価高騰による生活困窮も重なり、疾病・健康の悪化が大きく危惧される中、国民の命と健康の確保を文字通り「自己責任」に委ねようとするものである。受診回数を間引く「リフィル処方箋」を周知・広報し、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置で評価すべきなどの主張は、臨床現場の医学的判断に介入を図る越権行為と言わざるを得ない。
大企業・富裕層に応分な負担を
更に、「建議」では、被用者保険間で負担する前期高齢者納付金について、保険者間の格差是正として「報酬水準」に応じた負担にするよう求めている。その結果、相対的に報酬水準が低い協会けんぽの負担軽減に伴い国庫負担が大きく削減されることとなる。一方で、比較的報酬の高い層とは言え、労働者の負担増につながることとなる。
大企業の内部留保は過去最高を更新する一方、貧困・格差は深刻な状況が続く。財務省は、患者・利用者負担増や労働者の保険料増ではなく、大企業・富裕層に応分な負担を求め、公正な税財政を再建し、国費補助を引き上げて社会保障を拡充させることに力を注ぐべきである。