全国保険医団体連合会では、中医協総会(12月21日)で2023年度薬価改定(中間年改定)骨子案が了承されたことを踏まえ、下記の談話を厚労省、マスコミ各社に発表しました。[PDF:312KB]
2022年12月23日
全国保険医団体連合会
医科政策部長 竹田智雄
歯科政策部長 池 潤
原価不透明なままに新薬薬価維持は問題
~2023年度薬価改定について~
中医協総会(12月21日)は、2023年度薬価改定(中間年改定)の骨子案を了承した。改定の対象範囲は平均乖離率(今回7.0%)の「0.625倍超」と前回と同様の基準とした上で、臨時・特例的対応として、不採算品目の薬価は引上げ、新薬薬価は実質上据え置くとした。全品目数の48%の薬価が引き下げられ、影響額は3,100億円(医療費ベース)となる。
乖離額が大きい品目を中心に改定すべき
中間年改定は、医療機関・薬局、医薬品卸などに多大な負担を課す形となる。新型コロナウイルス感染拡大も続く中、前回同様、幅広い対象範囲で改定が実施されることは疑問である。引き続き、「価格乖離が大きな品目」を対象とする中間年改定を続けるのであれば、不採算となる後発品等の安定供給確保への配慮、患者の医療アクセス確保に鑑みて、薬価が低い後発品・長期収載品を集中的に下げる形となる乖離率を中心とした選定よりも、乖離金額の大きな高薬価の先発品を中心に改定すべきである。
新薬薬価維持は問題
新薬創出等加算の増額適用により新薬薬価が事実上維持されるが、診療側・支払側委員の双方より、新薬薬価の妥当性に関わって、薬価算定時の情報開示度の低さが問題視されてきた。現に、新薬の算定薬価の透明性を高めるため、原価計算方式による薬価算定時に製品総原価の開示度が50%未満だった場合、補正加算による薬価上乗せを一切加味しないルールが、2022年度薬価制度改革で導入されたが、これまで補正加算が付与される10品目の全てで適用されている。薬価算定のブラックボックスが依然解消されない中、新薬薬価維持は問題が多い。
不採算品目の薬価引き上げ急務
後発品など不採算品目の薬価引上げは必要だが、交渉力が弱い診療所への確実な供給改善につながるのか注視が必要である。供給不安が年々悪化して、全体の約3割、後発品の4割で出荷停止・限定出荷が発生している状況に鑑みれば、来年4月を待たずに緊急避難措置として、不採算品目の薬価補填の検討も考慮してしかるべきである。
合わせて、改定骨子では、2024年度薬価制度改革に向けて「後発医薬品を中心とした安定供給上の課題」も踏まえ検討するとしているが、経済効率性に偏重した医薬品生産体制の追求は改め、後発品メーカーが事業を安定継続し必要な設備投資ができるよう薬価を下支える改定ルールの創設こそが求められる。
基本診療料への充当こそ
第8波の本格到来、光熱水費・食材料費等の物価高騰、更に相次ぐサイバー攻撃に伴うセキュリティ対策コスト上昇など全ての医療機関に追い打ちをかけている。引き下げた薬価財源については、医療経営の維持 ・強化のために全額活用すべきである。今回、捻出された財源は事実上、オンライン資格確認整備に関わる加算、後発品使用体制加算の上乗せなどに一部充当されるが、持ち出しとなるランニングコストへの補填や医療現場が強いられている追加的業務負担への手当てにすぎない。全ての医療機関の経営改善に向けて、初診・再診料、入院基本料や入院時食事療養費等の引上げなどに充当すべきである。
以上