【要望書】新型コロナの検査・治療の公費負担、診療報酬特例の継続等を求める緊急要望書

全国保険医団体連合会では、政府が新型コロナウイルスの感染症法の位置づけを5月8日から5類に移行させることに伴う医療費や医療提供体制の見直し案の概要を発表したことを踏まえ、下記の要望書を総理、厚労大臣に提出しました。

2023年3月2日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

新型コロナの検査・治療の公費負担、診療報酬特例の継続等を求める緊急要望書

- 国民の命と健康を守ることこそ政府の役割 -

 

 マスコミ各社は本日、政府が新型コロナウイルスの感染症法の位置づけを5月8日から5類に移行させることに伴う医療費や医療提供体制の見直し案の概要を一斉に報道した。

 報道によると、①現在無料で実施できる検査や外来診療の窓口負担に対する公費を廃止し、5月8日から患者負担を求める、②入院費は原則公費を廃止し、9月末までは月に最大2万円の軽減措置とする、③価格の高い治療薬は9月末までは無料を継続するが、入院費と治療薬の取扱いは今夏の感染状況を踏まえて再検討するとされている。

 なお、診療報酬の特例及び病床確保補助金は段階的に縮小するとし、5類以降後は一般医療機関で患者受け入れを段階的に行うこととされ、行政が実施している入院調整も医療機関間での調整に切り替えるとしている。また、ワクチンについて2月22日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、2023年度は特例臨時接種を継続するが2024年度以降は有料化を検討するとしている。

 そもそも5類への引き下げの理由として政府は、高齢者も含めて重症化率・死亡率が季節性インフルエンザよりも低下していることや経済への影響などを挙げているが、感染力は季節性インフルエンザの数倍あり、高齢者施設等でのクラスターが多数発生し、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の数は2023年1月一月だけで1万人を超えている。

 今の状況下で、検査や治療への公費負担を廃止し、診療報酬の特例措置や病床確保補助金等の段階的縮小を行えば、国民の命や健康に大きな影響を生じる。

 特に検査や治療に対する公費負担の廃止は、感染症の蔓延と死亡者数の増大を招くこととなり、そうなれば日本経済に大きな悪影響を及ぼすことは必至である。

 岸田自公政権は、歴代自民党政権が否定してきた日本を戦争に引きずり込む敵基地攻撃能力の保有に向けた「防衛力整備計画」を策定し、防衛費をGDP対比で2%にする方針だが、今回の新型コロナ感染症対策予算の急激な切捨ては、国民の命と健康を犠牲にして防衛費をねん出しようとするものと言わざるを得ない。

 何よりも国民の命と健康を守ることこそ政府の役割である。当会は、国民の命と健康に責任を持つ保険医・歯科保険医の立場から、新型コロナウイルス感染症対策について、次の実現を求めるものである。

一、 新型コロナウイルス感染症の、検査及び治療に対する公費負担を継続すること。
一、 診療報酬の特例措置及びコロナ対応病床(空床確保)への財政措置を継続すること。包括点数の場合も引き続きPCR検査・抗原検査が出来高で算定できるようにすること。自己検査キットの自費使用推奨ではなく、医療機関での公費検査・診察を前提とすること。
一、 新型コロナウイルスワクチンは、2024年度以降も特例臨時接種を継続し、希望する人が無料で接種できるようにすること。なお、接種後の健康被害の調査・研究、補償の充実、治療方法の確立を図ること。
一、 新型コロナウイルス後遺症(LongCOVID)に対する調査・研究、著しい症状を来す患者への公費負担の適用、治療方法の確立を図ること。
一、 感染対策を強化するためにも、医科・歯科診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス費を大幅に引き上げ、強靭な医療・介護・障害福祉の提供体制を構築すること。
一、 科学的知見に基づく感染症対策の継続及び国民等への周知を図ること。
一、 高齢者施設や障害者施設入所者の「留め置き死(陽性になっても入院できずに施設療養を求められ、命を落とす)」等の実態調査・分析を行い必要な入院医療の確保を図ること。
一、 入院調整については医療機関間の対応に丸投げせず行政責任を放棄しないこと。保健所の数・体制・予算を強化し、公衆衛生行政を確立すること。

以上