【抗議声明】「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する

全国保険医団体連合会では、5月31日に「GX脱炭素電源法(束ね法案)」が参議院本会議で可決されたことを踏まえ、下記の抗議声明を総理、厚労大臣に提出しました。

2023年6月4日
全国保険医団体連合会
公害環境対策部
部長 野本 哲夫

【抗議声明】「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する

 

 岸田政権は5月31日、多くの国民が反対する中で原発の運転について60年を超える期間延長を認めるほか、原子力産業を支援することを国の責務とした「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法・再エネ特措法改定案の5つの束ね法案)を、参議院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した。

 同法案は、2011年の東電・福島第一原発事故以降に明言してきた「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組を継続的に行っていく」こと、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入などにより、可能な限り低減させる」とした政府公約を一方的に覆し、斜陽化している原子力産業の復活・支援と原子力利用推進を国の責務と明示したもので、断じて許すことはできない。しかも、関連事項の事前パブリックコメントや公聴会はおざなりに行われ、不安や懸念の表明と反対する多数の国民の声を一切受け付けず、「束ね法案」にすることで、当初からまともな審議を行わない姿勢のまま一気呵成に法案を強行可決、成立させたことは国会軽視も甚だしく禍根を残すものとなった。

 束ね法案に組み込まれた原子力基本法では、「原発活用によって電力安定供給や脱炭素社会を実現されることは『国の責務』」と明記し、原子力産業への国からの支援を法制化したこと自体重大である。東電・福島第一原発事故を教訓とした「原子力規制の強化」という国是を踏みにじる重大決定であり断じて容認できない。

 「GX脱炭素電源法」で▽原発運転期間の60年を超えて運転できるとしたことは、経年劣化による危険性をさらに増大させ、原発事故のリスクを高め、その危険性を国民に押しつけるものである。▽運転期間延長を原発推進機関である経産省所管の電気事業法に移管させ、原子力委規制委員会の裁量から分離して規制を後退させることになり、重大な不安要因となる。▽使用済み核燃料と高レベル放射性廃棄物に関する最終処分方法が未確立で、既存の保管・貯蔵量も上限に達しようとする中で、今後の方向性も一切示されておらず、高レベル放射性物質による被害を生む危険性を増大させることになる。④東電・福島第一原発事故の処理も廃炉への見通しもなく、被災者・避難者への賠償や補償をないがしろにしているなどの間題があり、一切認めることはできない。

 政府の最大使命は原発を廃止して原発の核放射線の危険を除去していくことである。

 我々は、岸田政権と今回の「GX脱炭素電源法」の可決成立に加担した政党全てに強く抗議するとともに、「GX脱炭素電源法」(束ね法)を速やかに廃止することを強く要求する。

 我々いのちと健康を守る医師・歯科医師は、原発ゼロ、再生可能エネルギー政策への転換と推進を強く求め、今後とも広範な国民と協力連携して運動を推進していくことを表明する。

以上