全国保険医団体連合会では、12月20日に厚労省が2024年度介護報酬改定について1.59%の引き上げとすることを発表したことを踏まえ、下記の談話を発表しました。
2023年12月21日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
【談話】国庫負担を拡大し、介護報酬・障害福祉サービス費の大幅引き上げの実現と
老健、介護医療院の多床室への室料負担導入中止を強く求める
(1.59%引き上げでは全く不十分、介護報酬を大幅に引き上げること)
昨日厚労省は、2024年介護報酬改定について1.59%の引き上げとすることを発表した。
しかし、令和4年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば全産業平均に比べて介護職員の賞与込み給与は月額68,000も下回っている。また前回報酬改定前の2020年を100とした消費者物価指数は、2023年10月時点で107.1まで上昇している。そもそも2000年の介護保険制度発足以降これまでに7回の介護報酬改定が行われたが、居住費・食費の自己負担化を含めた影響率は7回合計でマイナス1.53%であった。介護報酬を引き上げてこなかったことが、介護職員不足・介護崩壊を招いてきた元凶である。
職員の処遇改善、物価高騰への対応、感染対策をはじめとした利用者へのサービス向上のためには、10%以上の大幅な介護報酬引き上げが不可欠である。
(報酬引き上げ財源は、国庫負担の大幅引き上げでまかなうこと)
介護保険は、保険財源に対する国庫負担や企業負担が少ないため、報酬引き上げが介護保険料に与える影響が大きい。一方介護リスクは、要介護者や家族だけでなく、働き手を失う企業や社会全体にとっても大きな痛手である。さらに介護を含む社会保障分野の「総波及効果」は公共事業よりも高く、主要産業より「雇用誘発効果」は高い。
介護保険への国庫負担拡大は、国民や社会の介護リスクを回避し、日本経済を押し上げる大きな効果がある。国庫負担を拡充して介護報酬の大幅引き上げを行うべきである。
(6月実施に向けた準備を行うべき)
12月18日の介護給付費分科会では、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハは6月実施、その他のサービスは4月実施と報告された。さらに昨日の資料では介護職員処遇改善分も6月実施となっている。そもそも介護はケアプランを作成した上で利用者の同意を得てサービスを提供することが原則である。3月に告示・通知を出すのであれば6月実施とすべきで、診療報酬は6月実施となった。6年後の同時改定のためにも3年後の改定は6月実施とする方向で、様々な問題点を解決する手立てを今から取るべきである。
(障害福祉サービス費の1.12%引き上げも全く不十分、大幅引き上げを)
障害福祉サービス費は1.12%の引き上げとなっているが、10%以上の大幅引き上げとともに、65歳以上になっても障害福祉サービスを利用できるようにすることが不可欠である。
(老健・介護医療院の多床室の室料負担は中止すべき)
介護保険2割負担拡大は国民的な反対運動の前に断念したが、老健(その他型及び療養型)と介護医療院(Ⅱ型)の多床室の室料負担として月額8,000円もの負担増を行うことが発表された。室料負担を審議してきた介護給付費分科会では多くの委員から反対の意見が出されており、審議を無視して負担導入を強行することは許されない。そもそも高齢者はこれだけの負担増に耐えうる状況にはなく、負担導入の中止を強く求めるものである。