令和6年能登半島地震における被災者医療と医療提供体制確保に関する要望書(その4)

2024年9月5日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
厚生労働大臣 武見 敬三 様

全国保険医団体連合会
会長 竹田 智雄

令和6年能登半島地震における被災者医療と医療提供体制確保に関する要望書(その4)

令和6年能登半島地震の甚大な被害への貴職のご尽力に、敬意を表します。
能登半島地震は、1月1日の震度7によって多くの家屋の倒壊が発生し、元々の医療提供体制が弱い現状から、特に半島北部では交通の便が極めて悪く、大きな困難を抱えています。
地震から9カ月経った今でも、未だに多くの方が自宅以外での避難所生活を余儀なくされており、8月21 日現在で死者3 41 人(うち関連死112 人)、負傷者1334 人に達し、住宅被害12 万6 千棟により、現在も869 人以上が106 か所での避難所生活を余儀なくされています(これまでに最大5万人超が避難)。被災された方々の生命と健康を守るための医療支援と、被災地域の医療体制の復旧・復興は、緊急・不可欠の課題であります。
当会は、医師、歯科医師10 万7千人の団体として、1月1日(その1)と12 日(その2)、2月1日(その3)にも下記内容につきまして緊急要望をしましたが、その後の状況も踏まえて、改めて要望書を提出いたします。
財源措置を含め、下記事項実現に向けた早急な対応をお願いいたします。

1.当面9月末までとしている医療費等一部負担の免除対象期間を延長すること。
2.被災者の医療費一部負担金及び保険料(税)の免除措置を拡大すること。
(1)入院時の食事一部負担金の免除、保険料(税)の免除等も含めて行うこと。
(2)協会けんぽ、健保組合、国保組合、共済組合等が実施する被災者の医療費一部負担金免除などの費用を国が負担し、免除が実施できない保険者がないようにすること。
(3)これらの取り扱いを厚生労働省ホームページなどで周知するとともに、自治体や避難所、医療機関等、食料品店、他県に避難している方も含め、被災者が赴くあらゆる施設に紙媒体で張り出し・配布を行うとともに、SNS で広報を呼びかけるなど、あらゆる手段を通じて遺漏のないよう周知すること。特に、熊本地震では避難所よりも車中避難が注目されたことから、避難環境に応じた想定も含め周知すること。
3.被災者の介護保険の保険料および利用料、障害福祉サービスの利用料負担の免除および減免措置を講じること。
4.被災地域の医療機関への医薬品、医療材料などの迅速な供給・確保を実施すること。
(1)被災地域の医療機関に対する医薬品、医療材料、食材などの供給・確保を国の責任で実施すること。
(2)医薬品や医療材料が全国的に不安定な状況の中で、迅速な供給・確保をメーカーに周知・指導すること。
(3)被災地の医療機関等に不足しているガソリン、自家発電用の燃料等を十分に供給できるよう必要な手だてを講じること。
5.早急に国の負担で必要な数の仮設住宅、公営住宅を設置すること。
6.道路や電気、上下水道など、ライフラインの復旧に全力を挙げること。
7.被災者に対する予防接種を公費負担により実施すること。被災地で瓦礫や泥水の撤去等を行う被災者、及び被災地の支援活動に従事するボランティアで、破傷風ワクチンの接種を希望する者については、国がワクチン接種費用を公費で負担すること。また「心のケア」など長期的な見通しにたった継続的な医療支援を行うこと。
8.高齢者、病弱者などが適切な医療・療養が確保できるよう、被災地以外での場所の確保を含む、受け入れ体制について行政が責任を持って行うこと。
9.被災地の医療機関などが被災者救急医療や避難住民の健康を守るために行っている医療活動、診療活動に対して、各種補助金、災害救助法の適用拡大など最大限の経済保障を行うこと。
10.被災した医療機関および福祉施設への復旧・再建のために緊急支援を直ちに行うこと。地域住民の生命と健康を守る立場から、公的、民間問わず被災医療機関の医療機能の復旧・再建にむけ、支援対策を激甚災害法や特別立法の対象とするとともに、緊急かつ必要な支援措置を国や県をあげてとりくむこと。
(1)医療施設等災害復旧費補助金の対象を全ての民間医療機関(病院、有床診療所、無床診療所、歯科診療所、歯科技工所等)に拡大し、補助割合を大幅に増やすこと。被災医療機関に対する制度の周知の徹底、十分な申請期間、申請方法の簡素化を図ること。
(2)「なりわい再建補助金」等について、医療機関への周知を徹底し、十分な申請期間を設けるとともに、要件緩和及び申請方法の簡素化を図ること。
(3)災害復旧のための「医療貸付事業」について、融資の全期間を無利子とし、返済開始時期や融資期間を延長すること。また、貸付限度額を大幅に引き上げること。
11.「被災者生活再建支援法」を直ちに改正し、被災者が生活再建を行えるよう、支給金額を850 万円に引き上げ、支援対象を半壊、床上浸水、一部損壊世帯まで拡大し、全ての被災者に支給するなど抜本的に改善をすること。
12.災害等廃棄物処理事業補助金を活用し、医療機器を含む災害廃棄物の迅速な処理を行うこと。

以上