【要望書】ワクチン対策の抜本的改善を求める要望書

2025年4月21日

内閣総理大臣 石破 茂 様
厚生労働大臣 福岡 資麿 様

全国保険医団体連合会
会長 竹田 智雄
地域医療対策部医科部長 細部 千晴

ワクチン対策の抜本的改善を求める要望書

 

国民の命と健康、暮らしを守るためのご尽力に敬意を表します。
さて、本年4月1日に発足した今後の感染症危機に備える新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」(略称はJIHS(ジース))は、感染症の調査・分析から臨床対応までを一貫して担い、ワクチンや治療薬の開発も支援するとしています。

新設された機構においては、ワクチン行政に対する様々な不安や要望を正面から受け止め、予防接種行政に対する国民の信頼を一層高める必要があります。そのために重要なことは、ワクチンそのものの安全性・有効性を確保するとともに、副反応・有害事象に対するしっかりとした対策を構築することが不可欠です。

また、感染症の流行によって発生するワクチン不足を食い止めるためには、通常期におけるワクチン接種率を高めておくことが重要ですが、ワクチン接種費用に自己負担があることで接種を控える人も少なくありません。少なくとも、経済的理由によってワクチンが打てないという状況をなくすことも流行に歯止めをかけるためには重要です。

ワクチン接種により多くの疾病が防げることがわかっています。国民の命と健康を守るために必要なワクチンが十分に行き届くよう、ワクチン行政においてもこれまで以上の十分な対応を図っていただくよう、下記の実現求めるものです。

当会は、国民の命と健康を守るため、国の責任で以下の対策を早急に行うよう強く要望致します。

一、予防接種への信頼を一層高めるため、下記の3つを含む予防接種安全評価システム(Immunization Safety Office:ISO)を構築すること。

① 2013年参議院厚生労働委員会で採択された「予防接種法の一部を改正する法律案に対する付帯決議」第4項を組織的に実施するための「予防接種の安全性評価に関する臨床ネットワーク(Clinical Immunization Safety Assessment=CISA)」
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構を通じて集積する安全性情報と国立感染症研究所で集積する疾患の発症率等の疫学情報を機能的に活用して予防接種の安全性、有効性の評価を行うこと。
・医療経済的な分析を踏まえた施策の推進を確保するために予防接種導入前後の医療費及び社会的損失に対する影響を比較評価すること。
② 非接種者のデータをも利用した接種後の有害事象を収集し、ワクチンと有害事象との因果関係を早急に検証する大規模なモニタリングシステム(Vaccine Safety Datalink=VSD)
③ 早期に予防接種の安全性に関する問題を発見するため、医師に限らず接種者自身でも報告できる有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System=VAERS)

一、ワクチンの製造工程等において問題等が発生しないよう指導監督の充実を図ること。

一、政府として感染状況をリアルタイムで把握し、科学的知見に基づく感染症対策の継続及び国民等への周知を図ること。

一、繰り返されるワクチン偏在や不足の実態・原因を分析・評価し、「脆弱なワクチン供給体制」の抜本的改善に取り組み、国が責任を持ってワクチン供給体制の安定化をはかること。

一、病気や家庭事情などで、決められた接種期間にワクチン接種ができない人も費用の心配なくワクチン接種ができるよう、公費での接種を求める。

一.ワクチン接種後に発生した健康被害に対する相談窓口の拡充及び健康被害補償の充実、原因分析、並びに多様な症状を呈する患者さんの治療や相談支援体制の拡充を図ること。

① 申請方法を簡略化するとともに、必要となる診断書料等は保険給付の対象とするなど申請者の負担を軽減すること。また、奈良県が作成している「受診証明書の記載マニュアル」を参考に、医療機関の負担を軽減すること。
② 簡略化によって申請者数が増加することを想定し、審査に必要な人員を確保し、丁寧かつ、迅速に補償を行うこと。入院時食事療養及び入院時生活療養及び「評価療養」並びにセカンドオピニオンの費用を補償対象に含めること。
③ ワクチン接種による有害事象(予防接種により起こることが否定できない場合を含む)に対する治療は公費対象とするとともに、治療方法の研究・開発を行うこと。

一、予防接種施策を評価・検討する仕組み及び日本版ACIPを創設すること。

一、予防接種法に基づく定期予防接種に要する経費は、B類疾病を含め自治体や被接種者負担にせず、全額国庫負担とすること。また、卸価を適正化すること。

一、世界標準のおたふくかぜワクチンを日本でも定期接種化すること。

一.HPVワクチンについては、次の対策を取ること。

① 9価ワクチンの価格の適正化をはかり、早期に男子の9価ワクチンを承認すること。
② HPVワクチン定期接種の対象に男子も加えること。
③ HPVワクチンキャッチアップ接種の期限が延長となったが、接種率がまだまだ低い。HPVワクチンを規定回数接種できるように周知を徹底させること。

一、「国立健康危機管理研究機構」(JIHS)では、平時から様々な専門家と連携し、研究と臨床の両面から対策を講じることで、科学的な知見に基づき必要に応じて政府に提言して政策立案に役立てるとしている。政策立案のプロセスを常時広く国民に開示・周知すること。

一、JIHSにおいても超過死亡研究班を継続し、超過死亡の原因について、感染症への罹患、ワクチンの副反応、災害、経済的困窮による受診抑制などあらゆるケースを含めて分析し、今後の公衆衛生対策に反映させること。

要望書[PDF:211KB]