2025年8月5日
厚生労働大臣 福岡資麿 様
全国保険医団体連合会
病院・有床診対策部
部長 吉中 丈志
民間有料職業紹介事業に対する規制強化を求める要望書
国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
多くの医療機関が、公的医療費抑制政策と物価高騰等の中で非常に厳しい経営環境にさらされていますが、さらに経営悪化に拍車をかけているのが、医師・看護職員等不足を補うために支出を余儀なくされている有料職業紹介事業の手数料負担です。
2023年5月に発表された厚生労働省委託「有料職業紹介に対する理解向上のための調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社:2022/9/2~9/20実施)によれば、採用1件あたりの手数料は、医療・介護・保育3分野では平均91万2,863円であり、医師に至っては平均330万円もの手数料となっています。
また同調査では、「人手が不足していること等から、人材確保のための費用が経営上の負担となっている求人者が多い(中略)構造的問題」と指摘しています。有料職業紹介事業に頼らざるを得ない背景には、①医療従事者の育成と確保に国が責任を果たしてこなかった、②給与の原資となる診療報酬を抑制してきた、③公共職業安定所の充実を怠ってきたことなどがあります。
同調査では、医療・介護・保育3分野の利用者の45.4%が「悪質な民間人材サービス事業者に対する取り締まりの強化」を国への要望として挙げており、さらに有料職業紹介事業者の36.8%が規制を求めるなど、業界内部からも声が上がっています。
なお大臣は7月22日の閣議後記者会見で問題として言及されており、骨太の方針2025でも「実効性ある対策を講ずる」と明記されています。
以上を踏まえ、早急に下記の点を実施されるよう、強く要望いたします。
記
一. 医療職の職業紹介事業は公的な事業者を原則とし、医療機関にも医療従事希望者にも使いやすくすること。国と自治体は、ハローワークなど公的な就労斡旋事業の強化に責任を持ち、財源を大幅に拡大すること。
一. 民間職業紹介事業について、下記の規制を行うこと。
ア. 紹介手数料を大幅に引き下げること。
イ. 職業安定法の下に設けられた「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」を徹底し、下記を行う紹介事業者についてはペナルティを課すこと。
・短期間で職場を転々とさせる。
・雇用している職員に、さらに紹介の案内を行う。
・公的機関を装う行為や無料と偽り、後から手数料を請求する。
・契約時に条件や手数料などの額を明示しない。