日弁連が「現行のままの健康保険証を選択する権利を認めること」を決議

日本弁護士連合会は10月6日に「人権としての「医療へのアクセス」が保障される社会の実現を目指す決議」を決議しました。決議1(3)で「現行のままの健康保険証を選択する権利を認めること」としています。

<決議本文>

1 誰もが必要な医療を受けられる医療保険制度の構築

経済的理由等により医療へのアクセスが阻害されることのないよう、
(1)必要な医療を受けられずに多くのいのちが失われている危機的状況を踏まえ、医療費の窓口負担のない対象者の範囲の拡大を早急に行うこと

(2)多くの保険料滞納世帯が存在することを踏まえ、国民健康保険料の減免範囲を拡大するとともに、低所得世帯の保険料負担の大幅な軽減、保険料負担が軽減されている被用者保険における高額所得者の負担率の引上げなど、保険料についても応能負担を貫徹する施策を速やかに行うこと

(3)保険料滞納者にも正規の保険証を交付するとともに、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に大きな不安を抱く市民も多いことも踏まえ、現行のままの健康保険証を選択する権利を認めること

 

<提 案 理 由>

4 保険料滞納者に対する健康保険証の交付と、マイナンバーカードと健康保険証の一体化後の選択権

(1) 国民健康保険は、加入者には無職者が多く、保険料負担能力が低い上に、高い保険料負担のために、前記のとおり、保険料滞納世帯は国民健康保険加入全世帯の1割を超え、短期被保険者証交付世帯、資格証明書交付世帯も多い。保険料の滞納者の多くは、実質的に無保険者の状態に置かれている。健康保険証を取り上げることは、それによって、いのちが失われることにつながることであり、保険料滞納者に対しても、正規の健康保険証を交付すべきである。

(2) 2023年6月に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」により、マイナンバーカードと健康保険証が一体化し、健康保険証が廃止されることになった。これが実施されれば、保険料滞納があっても一定期間について正規の健康保険証と同様の窓口負担での受診が認められていた短期被保険者証の仕組みがなくなり、保険料滞納者は、これまで以上に窓口負担10割(償還払い)を求められる事態となることが懸念される。マイナンバーカードと健康保険証の一体化については、個人情報の漏洩やシステムダウンが起きるのではないか等、大きな不安を抱く市民が多いことも踏まえ、現行のままの健康保険証の交付を選択する権利を認めるべきである。