定員削減23年度は中止 コロナ禍で医師不足深刻化 医師増員へ転換こそ 需給検討会が取りまとめ

全国保険医新聞2022年2月5日号より

 

 厚労省の医療従事者需給検討会は下部組織の医師需給分科会と合同で1月12日、第5次中間取りまとめ案について議論し、座長預かりで了承した。2023年度からの医学部定員削減は中止する一方、歯学部振替枠を地域枠に移行する。今後の定員削減を念頭に、恒久定員内に地域枠を増やすとともに従事要件を強めるよう求めている。医師数の抜本的増員、従事する医師に配慮した地域枠の改善が必要である。

削減進める構えは崩さず

「骨太の方針2019」では、医学部定員の減員に向けて検討するよう求めており、当初2023年度から定員数を段階的に削減していく予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、地域で医師不足が深刻化し、医師の働き方改革による不足のさらなる悪化も見込まれる中、知事会を中心に定員削減に異論が噴出していた。
取りまとめでは、23年度の医学部定員については、昨年8月の分科会で確認した「22年度と同様の方法」で設定するとした確認事項を踏まえて、削減は明記していない。具体的には、23年度以降の定員数について、都道府県等と協力して医師偏在対策等を進めつつ検討し決定する、24年度以降の定員については、同年開始の第8次医療計画の策定等における議論の状況を踏まえるとしている。
他方、人口減少に伴い将来的には医師需要は減少局面にあるとして、「医師の増加のペースについては見直しが必要」として、削減を進める構えは崩していない。しかし、基となる医師需給推計は、▽医師の過労死ラインでの働き方を許容する▽受診抑制は発生していない▽現行の医師配置基準で十分とする―など前提に問題がある。その上、ICT整備やタスクシフト等で医師の時短が進む(供給抑制)など様々に仮定を織り込んだ推計であり、疑問が多い。

歯学部振替枠は地域枠に

臨時定員内に設けられていた歯学部振替枠(当該大学の歯学部定員減に応じて医学部定員増を認める措置。枠数44人)については、23年度より廃止して地域枠に切り替えるとともに、「地域医療や社会におけるニーズに対応するための枠組み」を充実させる形で活用すべきと提案している。
分科会では、歯学部振替枠を持っていた大学に限定せず、将来的に医師不足が見込まれる都道府県等の地域枠とすることや、専門医制度の19基本領域において、医師が不足する診療科(複数)を指定した形の地域枠として運用を図ることなどが検討されている。
入学時点で診療科を指定することについて、大学側は「合格者の学力が下がり、国試に通らない可能もある」「18歳の時点で診療科まで選択するのは現実的ではない」「教育内容を一般の医学部と分けてはいけない」などと異論を呈している。
高校卒業時点での診療科選択は現実的には困難であり、一般的な地域枠とする形が妥当である。

地域枠の運用強化図る

偏在対策に関わっては、「地域における医師確保の有効手段の一つ」として地域枠に重きを置いている。まずは「地域偏在・診療科偏在対策に資する(地域枠の)従事要件の設定方法」について検討するよう求めている。また、恒久定員内を念頭に「地域の実情に応じて地域枠の設置・増員を進める」よう求めている。今後の定員数の削減も視野に、地域枠を増やすとともに、従事要件を強化して、偏在是正を進める狙いである。
地域枠をめぐっては、全日本医学生自治会連合会などが昨年11月、離脱に対するペナルティ強化が進められている現状に対して、柔軟な制度設計を求める意見書を厚労省に提出している。
意見書では、地域従事要件が果たされなくなった場合に返還が求められる奨学金の利息を10%に引き上げた県が複数存在し、加えて山梨県では県内病院に一定期間勤務しなかった場合に「違約金」(最大842万円)を設定するなど強制力が強まっている傾向を問題視しつつ、現行の制度は「医学生、医師の人権を不当に制限する危険をはらむ。特に違約金の制度は早急に撤廃すべき」と求めている。医学連の調査では、事前の説明が不十分な状況や入学後に制度内容が変更されるケースがあるとの声も見られる。
地域枠の整備・運用に関しては、地域医療を志す医学生・医師の声や状況を十分に踏まえるとともに、待遇面での手当(奨学金、給与など)、充実した研修体制や希望する診療科の充実・専門医取得への支援、生活環境(保育、教育、住宅等)や医療・介護等の社会福祉制度の整備などを進めて、従事する医師のモチベーションを後押しする施策が必要である。

将来的課題に開業規制

将来に向けた課題として、当初の取りまとめ案に記された「医師少数区域経験認定医を管理者の要件とする医療機関の拡大等」について「改めて検討されることを期待する」との記載が、「①専門研修における診療科ごとの都道府県別定員設定、②医師少数区域経験認定医師を管理者の要件とする医療機関の拡大、③無床診療所の開設に対する新たな制度上の枠組みの導入等」として第2次中間取りまとめ(2017年12月)の文言を踏襲・修文した上で、「これまでの取組みの効果をみるとともに、これらが及ぼす様々な影響等を考慮したうえで」、あらためて検討されることを期待すると詳論された。
今後、医師偏在是正が進まない場合、現行の国が指定した「医師多数区域」において新規開業に際して在宅・初期救急など地域で不足する医療を担うよう求めることに加えて、新たな開業規制のあり方について検討を進める形となる。
日本の医師数はOECD平均水準の3分の2に留まる。全ての都道府県でOECD平均水準に達していない。早急に医学部定員数の抜本増員に舵を切るとともに、医師・医学生の権利・生活保障も踏まえた地域枠に改善を図りつつ偏在是正を進めていくことが必要である。