コロナ禍と医療現場 高齢者施設で緊張の日々

全国保険医新聞2022年3月5日号より

 

 コロナ禍で奮闘する全国の会員を紹介する。特養と有床診療所を運営する医療法人に勤務する東京協会の片倉和彦氏(写真)は、高齢者施設で感染が広がらないよう、対策に奔走している。

テンは一見おとなしそうだが小さな穴からでも鶏小屋に入り込み鶏を全滅させる。オミクロン株もおとなしそうと言われているが実際にはすばしこく老人施設にとって脅威である。肺炎なしでの急変、という現象が起きている。
2月7日に、医師会でコロナ感染介護施設の体験を聞いた。内容は次の通りである。
オミクロン株は、老人施設にとって凶悪な存在だった。感染の始まりを抗原検査で捕まえることはできなかった。死亡例は、死亡時期も死因もまちまちで、感染後いったん落ち着いたあとで急変した例もある。亡くなった時の抗原検査であらためて感染がわかる例、亡くなる前には既に陰性になっていた例などもある。コロナ感染後の内服薬は大きく長すぎて、飲めない老人が多い。ステロイド剤点滴が効いた例もある。
気をつけようと思った矢先の2月8日朝、特養と有床診療所の夜勤職員の子どもが陽性となった。PCRキットを施行したところ、職員本人も陽性であることがわかった。特養と診療所は厳戒態勢に。食事は居室配膳とし、リハビリは中止し、売店は閉店。利用者はそれぞれの棟の中で過ごす、ということにした。職員の動きも少なくし、レッドゾーン、イエローゾーンを設定した。
その後、体温を一日4回測りつつ、入院患者と特養利用者の状態観察を続けて、気になる人にはすぐ抗原定性キットを施行。2月10日に入院患者にはPCRを全員施行して陰性。同じく2月10日、唾液容器と鼻咽頭ぬぐい液容器とをかき集めてきて特養利用者検体を提出。さきほど全員陰性と連絡が来た。まだまだ気が抜けない。