大企業財務動向 株主配当6倍、利益は倍増 新自由主義が生んだいびつな富の偏在

全国保険医新聞2022年3月15日号より))

 

 企業の利益を最優先する新自由主義政策の下、大企業は賃金・設備投資を減少させる一方、利益・配当が激増するという富の偏在が生じている。政府の「新しい資本主義実現会議」に提出された大企業の財務動向に関する資料を読む。

 

賃金は増えないが…

2000年度から20年度にかけて、大企業(資本金10億円以上。金融・保険業除く)において、人件費は51.8兆円から51.6兆円に横ばいで推移し、設備投資は21.8兆円から20.7兆円に低下している。コロナ禍で利益が落ち込んだとは言え、経常利益は19.4兆円から37.1兆円に倍増している。
こうした中、配当金は3.5兆円から20.2兆円に6倍近くに激増している。最終的に、社内に残された内部留保(利益剰余金)は88.0兆円から242.1兆円に3倍近くに積み増しされてきた。うち手元で利用できる現預金(直ぐに換金可能な有価証券含め)も48.8兆円から90.4兆円に増加している。

長期経済停滞映す

大企業の財務動向には、富の偏在と新自由主義政策によって生じた長期経済停滞が映し出されている。リストラや非正規雇用の拡大、賃金抑制が進められ、家計が冷え込み内需が縮小した。一方、人件費削減などで得た利益は、新たな設備投資という形で循環せず、内部留保の膨張や、外国機関投資家をはじめとした株主配当の増加につながっている。この間続いた法人税減税がこの傾向を後押している。いびつな富の偏在というほかない。
大企業に応分な雇用責任や税負担を求めることで、医療・社会保障財源を確保し、低所得層や中間層の生活の下支えに回すことで、経済の活性化を図るべきだ。