22年度診療報酬改定では、紹介状なしで大病院を受診した際に徴収する定額負担が拡大された。受診抑制を強いる定額負担の拡大は問題が多い。
200床以上病院に拡大
紹介状を持たずに特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)を受診した場合、通常の窓口負担とは別に定額負担の徴収が義務付けられている。今次改定では、徴収対象を一般病床200床以上を持つ紹介受診重点医療機関にまで広げる。紹介受診重点医療機関とは、医療機関(病院、有床診)が都道府県に行った外来機能報告(10月より開始)に基づき、地域で基幹的に「医療資源重点外来」(例:抗がん剤治療、放射線療法、短期滞在手術、紹介外来)を担うものとして確認した医療機関である。ただし、国が定めたガイドラインでは、「医療機関の意向が第一であること」を踏まえるとしており、指定を受ける否かはあくまで任意である。紹介受診重点医療機関になり、一般病床で200床を持つ病院は定額負担が義務付けられる形となる。
徴収2,000円引き上げ
徴収金額(最低基準)が、初診は医科で5,000円から7,000円に、歯科で3,000円から5,000円に引き上げられる。再診は医科は2,500円から3,000円に、歯科は1,500円から1,900円に引き上げられる。
合わせて、病院志向の患者には基本診療料相当分は保険給付しなくて良いとして、引き上げた金額分を給付から除く運用が導入された。例えば、初診(医科)で5,000円から7,000円に引き上げた場合、患者負担は2,000円増えるが、基本診療料等相当額の2,000円分は公的医療保険から給付されず、病院の収入とはならない。10月から施行だが、周知期間を見込み、紹介受診重点医療機関での徴収開始は23年夏頃になる模様だ。
また、再診時に定額負担を徴収しなくてもよい患者の範囲が縮小されるとともに、紹介・逆紹介の患者が少ない場合に初診・再診料が減算される措置について、地域の医療機関に患者をより多く戻すよう要件を厳しくした。
紹介受診重点医療機関になり定額負担を徴収した場合、外来受診の減少が見込まれることから、事実上の補填措置として紹介受診重点医療機関入院診療加算(入院初日に800点)が新設された。病院の手上げを促進する誘導策だが、入院患者へのしわ寄せとなる。
一般外来での定額負担狙う
2,000円相当などを保険給付より控除する仕組みは、7割給付を維持するとした02年改正健保法附則を実質的に反故にするものである。「政策医療」を口実に保険給付しないことを正当化する措置となり、事実上、保険免責制の導入に近い。財務省は、給付控除の仕組みを援用して「かかりつけ医」以外を受診した際の定額負担の導入を図りたい構えだ。受診抑制を強いる定額負担の拡大は中止すべきである。