揺らぐ対面診療 早期発見・早期治療を阻む

全国保険医新聞5月25日号より

2022年度診療報酬改定では、リフィル処方やオンライン診療の初診の恒久化など、対面診療を基本とした医療を揺るがす内容が目立つ。早期治療・早期発見を阻みかねない。対面診療に基づく医療保障こそが必要だ。

市販薬へ誘導

必要な患者はこれまでどおり処方を
高齢者に処方が多い湿布薬について、1処方上限を原則70枚から63枚に引き下げた。
給付を制限すれば市販薬を購入せざるを得なくなるが、市販薬は自由価格なため、薬価と比べて8倍前後価格が上がる製品も見られる。保険も効かなくなるため、患者の負担は90倍近くなるケースも出てくる。
10月開始予定の窓口負担2割導入も重なれば、必要な医療を受けられなくなる高齢者が続出することが懸念される。
従来通り、63枚を超える処方が必要な理由をレセプト等に記載すれば処方できる。治療が必要な患者にはこれまで同様処方を続けることが重要だ。

リフィル処方箋導入

定期受診の必要を理解してもらう
患者の通院負担を軽減するとして、医師の診察がなくても繰り返し利用できる「リフィル処方箋」が導入された。医師の1回の受診で一定期間内に3回まで薬局で調剤を可能とする仕組みである。2回目以降の処方は医師の診察を経ずに調剤を受ける。投与日数制限がかかる医薬品は対象外である。
調剤に際して、薬剤師が患者の服薬状況等を確認して、調剤の可否を判断するが、事実上、医学的判断を伴う行為を薬剤師が担う形となり問題である。
今回の改定率をめぐる大臣折衝に際してリフィル処方箋の活用促進に合意しており、今後火種となることが予想される。
長期処方には病状悪化の副作用発見の見逃しなど伴うリスクが伴う。定期的な受診が必要な旨を患者にしっかり理解してもらうことが必要だ。

オンライン診療推進

対面医療の保障こそ
コロナ禍で特例扱いだった初診からのオンライン診療が恒久化された。オンライン診療料が廃止され、初・再診料にオンライン診療による場合が設定されるとともに、医学管理料上の評価対象が8から20種類に拡大された。
患者と直接面識がなくても事前にウェブ会議システム等(Zoom等)で相談していれば、初診からオンラインで診察が可能となった。また、▽医師の居場所について原則上は当該医療機関内に緩和された上▽通院・訪問による対面診療が可能な患者(概ね30分以内を想定)▽3カ月に1回は対面診療▽外来診療に占める回数が1割以下―などの算定要件は廃止された。診療方法は大きく制限されるが、初診料は対面時の9割近い水準であり、再診料は対面時と同じ点数設定である。
コロナ禍においても初診から電話・オンライン診療を行った医療機関は全体の約0・7%(2020年度)に過ぎず、遠方地の診療や処方ルール違反なども散見される。初診からの恒久化は極めて問題である。実際、1月のオンライン診療指針の改訂により初診からのオンライン診療が正式に可能とされたことを契機に、糖尿病治療薬「GLP―1受容体作動薬」をダイエット目的としてオンライン初診で処方するケースが散見されており、日本医師会は「医の倫理に反する」として強く問題視している。
患者の疾病状態が悪化する中、早期発見・早期治療に向けて、対面診療に基づいた外来医療の保障こそが必要だ。