国内で初めての新型コロナウイルス感染症患者が確認されてから2年半。医療現場は患者対応や感染対策に奔走してきたものの、感染の「波」が生じるたびに医療逼迫に陥り、医療機関の経営危機も招いた。これは、医師数抑制や病床削減など、コロナ前からの脆弱な社会保障政策の帰結でもある。これまでのコロナ政策を、医療現場の声とともに振り返る。
2020年
1月 | 15日 | 国内で新型コロナウイルス感染症患者を初めて確認。 |
2月 | 上旬~ | 医療機関でのマスクや衛生材料不足が深刻に。 |
27日 | 安倍首相による突然の一斉休校要請で、全国に混乱。 | |
3月 | 上旬~ | 保健所に相談が殺到し、深刻な人手不足で業務が逼迫。背景には90年代以降の統廃合による保健所減少。 |
11日 | WHOが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を宣言。 | |
4月 | 6日 | 「緊急性がないと考えられる(歯科)治療」について延期も考慮するよう求める事務連絡を厚労省が発出。 |
7日 | 7都府県に緊急事態宣言。後に全国に拡大。 | |
上旬~ | 患者増で病床が逼迫。病院の病棟の閉鎖、外来縮小が相次ぐ。患者減で医療機関は過去に例のない減収に。 | |
17日 | 安倍首相が全国民への一律10万円給付(定額給付金)を表明。 | |
17日 | 1世帯に2枚の布マスク(アベノマスク)の配布開始。総予算260億円で税金の無駄遣いと批判が相次ぐ。 | |
5月 | 25日 | 緊急事態宣言全面解除。 |
6月 | 12日 | 第二次補正予算成立。医療界が強く要望していた医療機関への減収補填は実現せず。感染防止補助金の措置が決まるも、実費の補助にとどまる。空床確保補助、医療従事者への慰労金が盛り込まれた。 |
7月 | 22日 | 新規感染者が過去最多を更新する中「GoToトラベル」事業を開始。開始6日前に東京を対象外とすることを決め、キャンセル料の補償をめぐっても迷走。 |
下旬〜 | 医療機関の補助金、慰労金の申請開始。手続きや給付対象等が都道府県ごとに異なり混乱。全国の協会・医会に問い合わせが殺到。 | |
8月 | 28日 | 安倍首相が辞任を表明。 |
9月 | 15日 | 第二次補正予算の予備費からの支出を閣議決定。財政措置はコロナ感染者(疑い含む)に対応する医療機関のみ。歯科診療所への措置は皆無。発熱外来診療体制確保支援が盛り込まれるも、煩雑な申請方式や制度設計で現場は混乱。 |
16日 | 菅内閣が発足。 | |
10月 | 1日 | 「GoToイートキャンペーン」事業本格開始、「GoToトラベル」事業に東京も追加。人流の増加とともに感染が拡大し、「第3波」の要因に。 |
12月 | 14日 | 6歳未満の乳幼児感染予防策加算を中医協が了承。(12月15日~) |
18日 | 感染症対策への評価として、初再診料等への加算を中医協が了承。(感染症対策実施加算。21年4月~) | |
28日 | 感染者増加のため「GoToトラベル」を全国で一時停止。(東京などは先行して停止) |
現場の声
当院(小児科クリニック)3月の収入は前年同月の3割減、4月は同6割減、さらに5月は同7割減まで落ち込んでいる。そこで7月のボーナス支払いのためにも持続化給付金を申請中だ。
(東京協会・細部千晴 本紙20年6月25日号より)
2021年
1月 | 8日 | 4都県に2回目の緊急事態宣言。後に11府県に拡大。 |
28日 | 第三次補正予算成立。医療機関の補助金追加が決定したが、支給に大幅な遅れ。 | |
2月 | 3日 | 感染症法、特措法等改正案成立。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の要請に従わない事業主、入院拒否の患者等に過料。病床確保要請に従わない医療機関に勧告、医療機関名公表も。 |
17日 | 新型コロナワクチンの医療従事者への接種開始。 | |
3月 | 22日 | 緊急事態宣言全面解除。一都三県では感染者数の増加が継続しており、1カ月後には3回目の宣言が出された。 |
4月 | 上旬〜 | 大阪で感染者数が激増。深刻な医療崩壊に。 |
25日 | 4都府県に3回目の緊急事態宣言。後に10都道府県に拡大 | |
26日 | 五輪・パラリンピック組織委による大会への看護師500人の派遣要請が明らかになり、療逼迫に拍車をかけると批判相次ぐ。「#看護師の五輪派遣は困ります」ツイッターデモは20日間で51万ツイートを突破。 | |
5月 | 上旬~ | 五輪中止の世論高まる。 |
12日 | 医療法改正案が成立。病床削減に給付金を支給する事業を法制化。 | |
6月 | 4日 | 75歳以上の医療費2割化法が成立。 |
21日 | 沖縄以外の緊急事態宣言解除。感染者数の下げ止まりやリバウンドの兆候があるとして、一部野党は東京の宣言解除に反対。 | |
7月 | 上旬 | 国からの供給不足のためにコロナワクチンの予約停止やキャンセルをする自治体が続出。 |
12日 | 東京に4回目の緊急事態宣言。後に21都道府県に拡大 | |
23日 | 東京五輪開幕。 | |
下旬〜 | 感染者数が激増し、過去最高の更新が続く。 | |
8月 | 3日 | 政府が、入院を重症患者や重症化リスクの高い人に制限し、それ以外は自宅療養を原則とする方針を公表。批判が相次ぎ、5日には「中等症患者で酸素投与が必要な者、投与が必要でなくても重症化リスクがある者」も入院対象になると説明を修正。しかし入院制限の方針は撤回せず。 |
8日 | 東京五輪閉幕。 | |
9月 | 3日 | 菅首相が辞意を表明。 |
30日 | 感染症対策実施加算の打ち切り。6歳未満の乳幼児感染予防策加算も10月以降は点数が半分に。 | |
10月 | 1日 | 緊急事態宣言全面解除。 |
4日 | 岸田内閣発足。 | |
31日 | 第49回衆院選。 | |
11月 | 5日 | 会計検査院の報告で、新型コロナ対策事業で計上された予算のうち約22兆円(3割超)の未執行が明らかに。アベノマスクを含む布マスク約8200万枚が配布されずに倉庫に保管されていたことも発覚。22年4月から希望者等への配送を始めたものの、3月までの保管費用は約9億5000万円、配送費用なども約5億円に上る。 |
12月 | 17日 | 岸田首相がワクチン3回目接種時期の前倒しを発表。接種間隔についての政府方針決定が遅れ、自治体に大きな混乱をもたらした。 |
22日 | 22年の診療報酬改定率発表。本体はわずか+0・43%で、コロナ禍以前の水準にも届かず。ネットでは▲0・94%のマイナス改定。 | |
31日 | PCR検査、抗原検査の保険点数を引き下げ。医療機関からは「逆ザヤになる」と怒りの声。 |
現場の声
自宅療養中や入院調整中に症状が悪化し呼吸不全となり、救急車を呼んでも、入院先が見つからず、6時間も救急車の中で酸素吸入するということが頻繁に起こっています。深夜までの対応が続き、徹夜で働いている保健師もいます。
(大阪府関係職員労働組合「保健師の声」21年4月20日)
陽性になっても入院できない事態が広がっています。ベッドがあってもケアにあたる人員がなければ無理です。五輪に人員をとられています。
(医療従事者・47歳 「医療・介護・保健所の削減やめて!いのちまもる緊急行動 首相への手紙 コロナ禍 私が経験したこと」より)
2022年
1月 | 上旬 | オミクロン株の感染が急拡大。 |
9日 | 米軍基地内でのクラスター発生をきっかけに感染拡大した3県(広島、山口、沖縄)にまん延防止等重点措置。その後2月にかけて36都道府県に拡大。米軍は日米地位協定により日本の検疫の対象外であり、21年9月以降、出入国時のPCR検査を実施せず、入国時の行動制限期間も日本の規定より短くしていたことが判明。 | |
中旬 | オミクロン株の感染爆発。発熱外来の患者数が激増し、感染者数は最大で第5波ピーク時の約4倍に。高齢者施設でクラスターが多発し、施設内で死亡するケースも増加。 | |
2月 | 9日 | 中医協が診療報酬改定の答申。感染防止対策の評価として、診療所を対象に外来感染対策向上加算を新設。しかし一般の診療所にはハードルが高く点数も低い。 |
22日 | コロナによる1日の死亡者数が272人と過去最多に。 | |
3月 | 21日 | 全国でまん延防止等重点措置が終了。 |
31日 | 6歳未満の乳幼児の感染予防策加算が終了。 |