導入義務化あまりに乱暴
政府が23年4月から医療機関等でのマイナンバーカード保険証利用の受付システム導入を原則義務化する方針を示したことを受けて、保団連は6月9日に緊急でマスコミ懇談会を開催し、政府方針の中止・撤回を訴えた。記者会見には報道機関8社が参加。メディファクスで報道された。
「コロナ対応に忙殺」「事務負担増を懸念」、「カードを持参する患者そのものが少ない」。さまざまな理由から、マイナンバーカードによるオンライン資格確認の運用を開始した医療機関は5月29日時点で19・5%に過ぎない。保団連の住江憲勇会長は、「23年4月からの原則義務化」について「残り8カ月で8割の医療機関にシステム導入を義務化するのはあまりにも乱暴」と指摘した。
保険証でも閲覧できる
オンライン資格確認は、マイナンバーカードに結びついた電子証明書をキーとして、医療機関から支払基金等のシステムの資格情報や医療情報にアクセスできる仕組み。保険証の被保険者番号を使用する場合は、オンラインでの資格確認のみが可能である。
政府は「医療の質向上に資する」とマイナンバーカードによるシステム導入のメリットを強調しているが、住江会長は「健康保険証を使って薬剤情報、特定健診などを閲覧することもシステム上可能だ。実際に福島県沖地震でも実施された」と反論し、保険証による医療情報の閲覧を平時からできるようにすればよいとした。
現状として、個人情報漏洩の懸念等からカードを取得したものの日常的に携帯していない人も多い。住江会長は「マイナンバーカード受付体制の導入は院内でのカード紛失、マイナンバーの漏洩リスクが格段に上がる。不慣れな高齢者への職員の手助けも必要となる」と医療現場の負担増に懸念を示した。
今後、保険証を原則廃止するともしているが、事実上のカード取得義務化となり、保険診療が受けられなくなる可能性も出てくる。
住江会長は、「現行の保険証提示による資格確認において特段の齟齬も生じていない。資格過誤による返戻をなくすシステムは既に運用されている」と強調し、医療機関等へのシステム導入義務化や保険証の原則廃止方針の中止・撤回を求めていく決意を表明した。
保団連の主張
- 患者・国民、医療機関はマイナ保険証を求めていない
- 保険証提示による資格確認で特段支障が生じていない
- 保険証の原則廃止で保険診療が受けられなくなる可能性がある
- 保険証は原則交付、カード利用は任意が合理的で簡便な対応
- 23年4月から医療機関等へのシステム導入義務化は中止・撤回すべき