【主張】新自由主義と決別し、医療費抑制政策の抜本転換を
岸田政権は、骨太の方針2022において、富の偏在と格差の拡大を招いたアベノミクスを堅持し、医療・社会保障費削減に固執する一方、防衛費倍増を念頭に5年以内に防衛力を抜本的に強化する方針を打ち出した。
岸田首相が肝いり政策に掲げた「新しい資本主義実現会議」の資料でも、企業の利益を最優先する新自由主義政策の下、大企業は賃金・設備投資を減少させ、利益・配当・内部留保等が激増し、富の偏在が生じていると分析している。
しかし、「新しい資本主義」実行計画では、新自由主義の弊害を指摘するも、国民所得の向上や非正規処遇改善など「所得再分配」の具体策は皆無であった。
コロナ禍で露呈した問題は、40年来の新自由主義政策に由来する。長年の医療費抑制政策や感染症病床削減や保健所統廃合は、コロナ危機への医療・公衆衛生の対応力を弱体化させた。 日本の医療・社会保障給付費が低い水準であることは、厚労省も認めている。医療給付だけで比較すればドイツより6・9兆円、フランスより6・4兆円も少ない。社会保障財源の不足は、応能負担原則を強化することで解消できる。労働分配率や所得再分配機能を正常化する施策の推進とセットで進めることで経済の好循環が実現できる。保団連は、「医療再建で国民は幸せに、経済も元気に―医療への公的支出を増やす3つの提案」で財源確保策を提案している。
年金引き下げ、物価高騰で高齢者の生活は悪化の一途にある。その上、10月から、医療費の窓口負担増が実施されれば、さらなる受診抑制・健康悪化を招くことは明白だ。高齢者のいのち・健康・人権に関わる問題として参院選に向けて負担増の実施中止を強く訴えていきたい。
大切なことは新自由主義と決別し、病床削減、医師数の抑制、公衆衛生行政の削減・縮小、患者負担増など医療・社会保障抑制政策を推進してきた政治そのものを抜本的に転換させることだ。7月10日の参院選は「医療・社会保障を充実させる」ことを当然の前提として、「医療提供体制・保健所機能をどう充実させるか」などが問われる選挙にしなければならない。