低いメリット、高いリスク オンライン資格確認を考える②

低いメリット、高いリスク

 骨太の方針2022は、マイナンバーカードの保険証利用などオンライン資格確認の導入義務化を打ち出した。問題点を連載で解説する。第2回はオンライン資格確認の必要性について考える。(随時掲載)

診療所での運用開始16%

診療所(医科、歯科)においてオンライン資格確認を運用開始したところは16%前後に留まる。コロナ禍に伴う諸々の対応が優先されるとともに、オンライン資格確認が緊急・不可欠というわけではないことが理由だ。
まず、現行の保険証の目視による資格確認でも、資格切れ受診の多発やなりすまし受診の横行といった問題は起きていない。
他方、オンライン資格確認により、資格過誤レセプトの返戻が減るとしているが、オンライン請求している場合、保険者間で調整して返戻を減らすサービスが利用できる。サービス利用に際して、オンライン資格確認の導入は求められていない。
患者がマイナカードで受診した際、タッチパネル上で同意すれば、医師等が他院での処方薬(レセプト情報)や特定健診等の医療情報を閲覧できるが、最長1月半のタイムラグがある上、すべての患者に必要というものでもない。これまでも医療現場では必要に応じてお薬手帳などで患者に直接確認している。

トラブル・負担増

マイナカードの保険証利用については、患者がカードリーダーを自ら操作する想定だが、ICT機器に不慣れな方には当然手助けが必要となる。
中にはマイナカードを職員に渡して確認するよう求める患者もいる。受付人員に余裕もない中、保険証とマイナカードで受診が混在して窓口業務はさらに混雑する。
システム導入費用に加えて維持費が発生する一方、院内にマイナカードが日常的に持ち込まれる結果、カード紛失・マイナンバー漏洩、カード拾得・届出など無用なトラブル・負担が生まれる事態が避けられない。

患者・国民は望んではない

患者からすれば、現行の保険証の方が使い慣れており、あえてマイナカードを使おうと思わない。
カード申請・更新に伴う手続の煩わしさ、カード紛失による個人情報漏洩への危惧、さらに政府に対する信頼の低さも重なり、マイナカードを保険証として利用することを患者・国民は特段望んでいない。
国はマイナカードにあらゆる個人情報を紐づけて、さまざまな公共サービスでの利用を可能としていく方針である。マイナカード紛失により膨大な個人情報が漏洩するリスクへの懸念から、カードを家にしまい込む人がさらに増えるだろう。
マイナカードでの受診を求めることは非現実的である。オンライン資格確認のシステム導入義務化は撤回し、任意での対応に留めるべきである。