オンライン 資格確認 原則義務化は撤回を

地域医療に重大な支障

 中医協は8月10日、保険医療機関等に23年4月からオンライン資格確認の導入を原則として義務づける療養担当規則の改正案を答申した。紙レセプトで請求している医療機関を除き9割超の医科・歯科診療所が対象となる。保団連は、地域医療に重大な支障をもたらしかねないオンライン資格確認の原則義務化の撤回に向けて、署名や調査等に取り組む。

中医協による療養担当規則の改正案では、紙レセプトで請求している施設等を除く、医療機関・薬局に23年4月からのシステム整備の原則義務化を求めた。9割超の医科・歯科診療所が義務化の対象となる。

半年で12万件の運用開始は非現実的

厚労省は現在、顔認証付きカードリーダー未申請、ポータルサイト未登録の医療機関等に対し、支払基金やシステム事業者等からの架電、案内文書の郵送等を通じて、23年4月からの「義務化」に言及しつつ、強引にシステム整備を求めている。
しかし、7月末時点でカードリーダーを申し込んだ医科・歯科診療所はは全診療所数の51・7%に達した一方、運用開始した医科診療所は17・5%、歯科診療所は18・1%に過ぎない。
システムの運用が開始していない診療所(紙レセプトは除く)は約12万件に上る。残り約半年での「義務化」は無理筋であり、非現実的な政策目標である。
歯科診療所6割超がインフラ未整備
厚労省は、紙レセプトでの請求が認められている医療機関等は例外扱いとする理由を「システム導入の前提となる院内等の電子化が十分進んでいない」としている。
しかし、オンライン資格確認のシステム導入にはオンライン請求回線の整備が不可欠となるが、オンライン請求を実施している医療機関・薬局は全施設の65・8%に留まり、残りの29・9%が光ディスク、4・3%が紙レセプトで請求している。 光ディスクで請求している医科診療所約2万件(23・7%)、歯科診療所約4万5000件(66・8%)がシステム導入の前提となるインフラが未整備な状態にある(表1)。

運用開始もシステムトラブルが多発

保団連が実施した緊急調査(4231件に送付、回答数387件、8月19日時点)では、オンライン資格確認のシステム導入の原則義務化について、反対が74・9%と多数を占め、懸念が多く寄せられた(表2)。また、既にオンライン資格確認の運用を開始した医療機関(20・8%)のうち、31・4%が「トラブルがあった」と回答。具体的な内容として、74・1%がデータ上のトラブル(基金等での登録データの不備更新遅れなど)となった。
新型コロナの感染拡大で各地の発熱外来がパンクし、医療従事者への感染拡大で通常医療も制限が強いられている。こうした中、残り半年足らずでのシステム整備は不可能に近く、対応不能となる医療機関が続出することは必至である。
8月10日の中医協の答申では、「年末に導入状況の点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行う」等の付帯意見が付された。
保団連は会員署名を呼び掛けるとともに、実態調査、特設サイト等での広報を強化し、政府に23年4月からの原則義務化撤回を強く求めていく。