オンライン資格確認原則義務化に関する緊急調査(結果概要)

オンライン資格確認システム導入原則義務化に関するアンケート結果

「約 8 割が原則義務化に反対」「必要性感じない 6 割」「運用開始の 3 割でトラブル

【緊急会員調査・結果概要】

【会員調査・詳報】

【医療現場の声

 

8 月 10 日の中医協総会で紙レセプト以外の医療機関・薬局にオンライン資格確認のシステム導入を原則義務化する療養担当規則の改正案が答申されたことを受けて保団連は、緊急アンケートを実施しました。結果概要を報告します。
調査期間:2022 年 8 月 12 月-8 月 31 日
調査方法:
アンケートは、保団連メールマガジンに登録している会員(医科 2493 人、歯科 1703 人
総計 4196 人)に送付。
回答数:489(医科診療所 241 件、歯科診療所 235 件、病院 12 件、N/A 3 件)
(回答率 11.6%)

<結果概要>

オンライン資格確認の原則義務化(反対:78.6%)、保険証の原則廃止(反対:75.5%)と約 8 割が反対した。オンライン資格確認のシステムについて、64.9%が「必要性を感じていない」と回答しており、「マイナンバーカードの紛失・漏洩が心配(71%)」、「セキュリ
ティ面の不安(67%)」などセキュリティ・情報漏洩への懸念が強い。また、「設備投資やランニングコスト上の負担(85.3%)」、「窓口の事務負担増(70.4%)」、「設備投資やランニングコスト上の負担(85.4%)」など費用負担への不満も強い。
レセプト請求方法は、「オンライン請求(46.9%」」と「電子媒体請求(45.9%)」がそれぞれ半々だが、資格確認システムの導入状況について、「運用を開始した」が 17.9%に留まる一方で、「導入を検討・予定しない」が 45.4%となった。
運用を開始した医療機関の 33%でトラブルが発生している。具体的なトラブルは、「データ上のトラブル(71%)」、「機器関連のトラブル(41.9%)」などデータや機器のトラブルが大半を占めた。
回答者の 97.5%が医科・歯科診療所、年齢層は 40 代・11.7%、50 代・30%、60 代・42.4%、70 代以上・14.2%となった。

<まとめ>

8 月 10 日中医協で答申された原則義務化は紙レセプト請求の医療機関を除き、9割超の医科・歯科診療所が対象となる。8 月 14 時点で運用開始した医科診療所は 18・1%、歯科診療所は 18・8%に過ぎず、システムの運用を開始していない診療所(紙レセプトは除く)は約 12 万件に上る。
緊急調査では、現役の医師・歯科医師の約 8 割がオンライン資格確認のシステム導入原則義務化に反対し、64.9%が「必要性を感じていない」と回答した。回答医療機関の92.8%が「オンライン請求」もしくは「電子媒体」で保険請求しており、電子技術の活用そのものに「消極的」なわけではない。
現行の被保険者証による資格確認で特段の支障は生じていない上、義務化までして医療現場に導入すべきシステムなのか、多く医師・歯科医師が疑問を感じている。緊急調査でも、オンライン資格確認のシステム導入について、セキュリティ・情報漏洩への懸念も強く、費用負担増等への不満も強いことが示された。深刻なのが、既に運用を開始している医療機関の約 3 割でトラブルを抱えており、その 7 割がデータ上のトラブルと回答したことである。この状況で 9 割を超える医療機関に残り半年足らずで、システムを強引に導入すれば混乱は必至である。
厚労省は 8 月 24 日の三師会との合同説明会で 8 月 10 日の中医協付帯意見に沿って、年末までの導入状況を踏まえ再検討するとした。政府は、「医療の質向上に資する」と一方的に主張し、保険医取り消しや指導も示唆しながら、義務化を押し付けるのではなく、医療現場の声に耳を傾けて、原則義務化の方針を撤回すべきである。