「新型コロナ」、「口腔ケア」をテーマに2講演
保団連は7月10日、23協会・医会から60人の参加で、研究・学術交流会を開いた。新型コロナウイルス感染症の状況を把握し、今後の対策を整理するとともに、協会・医会の研究・学術活動を交流した。交流会では、長崎大学大学院教授・森内浩幸氏(写真)の記念講演「新型コロナウイルス・パンデミック」、大阪大学大学院教授・阪井丘芳氏の特別講演「COVID︱19と唾液腺」を行った。2つの講演の概要を報告する。
新型コロナウイルス・パンデミック
一人一人が出来ること、地域医療が出来ること、国としてやるべきこと
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授 森内 浩幸 氏
森内氏はまず「新型コロナウイルスは普通の風邪とどこが違うのか」について解説された。新型コロナウイルスは高齢者やリスクを持つ人が重症化しやすく、デルタ株のものは下気道で増殖し重症化しやすい。他方、オミクロン株は上気道で増殖しやすいので軽症ではあるものの感染力が強く、変異とともに弱毒化するとは限らないとのことである。
また、森内氏によれば、人から人に感染する伝染病は、いずれは“風邪のコロナウイルス”となって定着し終息する。集団免疫を獲得することがCommon diseaseとなるために必要であり、新興コロナウイルスがヒトの社会に深刻な影響を与えるようになったのは、昔よりも人の移動距離が増えたことや、人口密度が増したこと、平均寿命が延びたことによるものと説明した。
次に新型コロナワクチンについて解説。今までのワクチンと違い、病原体の蛋白を自分の細胞に作らせ、より強力で自然な免疫が付与されるmR
NAワクチンは、細胞性免疫を高める効果もある。4回目接種で中和抗体が10倍になり、死亡率も4分の1になる計算だ。ワクチンに求められる効果は、重症化阻止➡発病阻止➡感染阻止である。日本での致死率は、オミクロン株では3回目のワクチン接種が遅れたため低下していない。森内氏は、重症化のハイリスク者にもっと早く接種していれば、被害は少なかったのではないかとし、4回目接種で重症化を防ぐ効果は長期にわたり持続するとした。
予防策について森内氏は、手洗い・換気・距離をとる・マスク・ワクチン(Swiss cheese model)しかないと指摘。罹患後6カ月後でも何らかの後遺症を残すものが多く、倦怠感、息切れ、嗅覚障害、不安、咳、認知機能低下が主なものだが、社会的ストレスの関与の可能性も考えられているとのことである。
さらに小児科医の立場から、子どもについては自然免疫が強いため「新しい病原体への対応が上手」としつつ、徹底的な感染予防策が長期に続くと自然免疫が弱まり、感染防御機能が低下する可能性があると述べた。また学校閉鎖ではコロナの流行は抑えられないし、小児はマスクをした他人の表情を読み取ることが苦手であり、学校閉鎖による学力の低下、学力格差、収入減少、不健康からの寿命の短縮が懸念される。医療従事者が子どもを見るために出勤できないという問題もある。
最後に森内氏は、2020年と21年の2シーズンにインフルエンザの流行がなかったことや、新型コロナに対する感染予防策(行動制限やマスク着用)が緩和されたことなどから、新型コロナとインフルエンザの同時流行(ツインデミック)の可能性を示唆された。
(理事 山本晴章)