核兵器禁止条約が2017年に採択されてから5年。9月22日新たに2カ国が批准するなど、現在、批准は68カ国、署名は91カ国となっている。6月にオーストリアで開催された核兵器禁止条約第1回締約国会議では「核兵器のない世界を実現するために直ちに行動を起こすことが必要である」としたウィーン宣言を採択した。
広島市平和記念式典で国連のグテーレス事務総長は「深刻な核の脅威が、中東から、朝鮮半島へ、そしてロシアによるウクライナ侵攻へと、世界各地で急速に広がっている。核兵器保有国が、核戦争の可能性を認めることは、断じて許容できない」とあいさつした。広島県の湯﨑英彦知事は「力には力で対抗するしかない、という現実主義者は、なぜか核兵器について、肝心なところは、指導者は合理的な判断のもと『使わないだろう』というフィクションたる抑止論に依拠している。本当は、核兵器が存在する限り、人類を滅亡させる力を使ってしまう指導者が出てきかねないという現実を直視すべきだ」と訴えた。
8月1日から開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終文書を採択することなく閉会した。NPT第6条は締約国に核軍縮の誠実な交渉義務を課している。会議初日に発言した岸田首相はこの6条にまったく触れなかった。広島被団協理事長佐久間邦彦氏はニューヨークで記者会見を開き「被爆者の気持ちが何もわかっていない。広島出身などと言ってほしくない」と抗議した。
ウィーン宣言では「一部の非核武装国が核抑止力を擁護し、核兵器保有の継続を奨励し続けていることに懸念を抱いている」と核の傘の下にいる国々への懸念を表明した。これは核禁条約会議に参加しない日本への懸念ともいえる。原水爆禁止世界大会でICANオーストラリア、IPPNW共同議長のティルマン・ラフ医師はオーストラリアが労働党政権になり国民の多くが核禁条約に賛成していると報告した。核の傘の下にいる国々も核禁条約に参加する可能性が出てきた。
憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼し」とある。唯一の戦争被爆国日本こそ、核廃絶の先頭に立つべきである。