コロナ禍で問われる医療者と患者の向き合い方 夏季セミナー・シンポジウム

 保団連は7月2、3日に第51回保団連夏季セミナーをウェブ併用で開催し、全国から医師・歯科医師380人が参加した。シンポジウムの概要を紹介する。

私たち医療者は6度の感染の波に翻弄されながら、日常医療と同時に発熱外来、検査、ワクチンなどコロナ対応で役割が求められた。コロナ禍を踏まえて、患者とのより良き関係を作るために私たちが向き合うべき課題とは何かを考える目的で、シンポジウムを開催した。
基調提案には邉見公雄氏(全国公私病院連盟会長)を、パネリストには林裕章理事(林外科医院理事長)、橘田亜由美氏(東大阪生協病院院長)、山田秀樹氏(立川相互病院副院長)の3氏を迎えた。
邉見氏は、医療提供体制の改革は医師需給と偏在問題の解決が「一丁目一番地」としつつ、絶対的な医師不足の問題を指摘。また、医療・介護部門は就業者が多く労働分配率も高い点を強調した。
2022年診療報酬改定については、コロナ対応医療への評価が不可欠だとし、コロナ下においてもマイナス改定を求めた財政審の提案を批判した。

余裕ある医療体制必要

林氏は、自院で総力あげてワクチン接種に精力的に取り組んだ経験や、老人ホームでのクラスター感染を防ぐために協議を重ねサービスを継続させた経験を踏まえつつ、有事に有効に対応できなかった原因は保健所や医療機関の削減にあると指摘。「医療従事者の充足や収入減への補助などを含めた余裕のある医療体制の構築が必要だ」と強調した。
橘田氏は、コロナの第4波で医療崩壊に直面した大阪府の状況を報告。在宅での手遅れケースを防ぐために、通常の在宅医療患者に加え、急遽「コロナ往診」で中等症の治療を行っていることを紹介した。今後、地域医療構想による急性期病床の削減を見直し、命を最優先にする政治に転換させる必要があると訴えた。
山田氏は、地域の医療機関にも呼び掛ける形で、通常診療と並行してコロナの軽症者から重症者までに対応してきた経過を報告。今後の課題として抜本的な診療報酬の見直し・改善などが必要だとした。地域の中で住民の健康を守るには、病診連携の強化も背景に、各医療機関が「かかりつけ」機能を維持できる環境づくりが必要とし、「かかりつけ医」の制度化や法制化で解決する問題ではないと述べた。
フロア特別発言として、井上美佐理事(北原医院院長)から、今次改定で導入されたリフィル処方箋やオンライン診療の問題点について指摘があったほか、細部千晴理事(細部小児科クリニック院長)から小児医療の現状、馬場一郎理事(うのもり歯科医院院長)から歯科医療の現場の状況について報告があった。
(副会長 竹田智雄)