河野太郎デジタル大臣が10月13日に「2024年度秋に保険証廃止を目指す」と表明したことを受け、患者・国民、医療現場の怒りや困惑が噴出し、廃止撤回を求める世論が急速に広がっている。保団連は翌日の声明で、保険証廃止の政府方針は撤回し、これまで通り保険証を交付することを求めた。(3面に現場の声、8面に実態調査)
24年秋の廃止明言
河野大臣は記者会見で、デジタル庁・厚労省・総務省など関係省庁での協議結果を踏まえ、「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」と表明した。
6月の骨太の方針2022では、「医療機関等でのオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」としていた。今回の大臣発言は、「24年秋」と具体的な時期を示し、「原則廃止」を「廃止」と大きく踏み込んだものである。
いのちを「人質」にカード取得を強制
ポイント付与など多額の税金投入にもかかわらず、マイナンバーカードの取得は国民の約半数、マイナ保険証の登録は国民の約2割にとどまる。
こうした中、政府は23年3月末までに全国民がマイナンバーカード取得を目指すとの政府目標を強引に達成するため、健康保険証を24年秋に廃止するという強硬手段に打って出た。
健康保険証がマイナンバーカードに一本化されることになれば、患者はカードを常時携帯することとなり、院内含めた紛失・盗難等のトラブルは各段に増える。個人情報流出や経済的被害などのリスク増大は図り知れない。
新聞各紙からは「国民不在の強引な普及策」(毎日新聞社説、10月14日)、「法的には任意のカード取得を、生命に関わる保険証を使って事実上、義務化するもの」(東京新聞社説、10月15日)など保険証を人質に取り、強制的にマイナンバーカード取得を進める政府方針に批判が出されている。
地域医療崩壊に拍車かける
現在、マイナンバーカードでオンライン資格確認できる医療機関は3割にすぎない。23年3月末までのオンライン資格確認の体制整備の原則義務化をめぐり、各地から、小規模、高齢・閉院予定、離島・へき地や設備投資費用が重いなどの事情で体制整備できないといった悲痛な声が多く寄せられている。
24年秋までにすべての医療機関でオンライン資格確認を行うことを当然視するがごとき今回の大臣会見は、地域を熟知した医師・歯科医師等に大きな負担を強い、地域医療の疲弊・崩壊に拍車をかけるものである。
オンライン資格確認の全面的導入は、常時オンライン接続に伴うセキュリティ対策強化、マイナンバーカード紛失・更新切れ・破損時への対応、停電、システム不具合時に資格確認に困難を来たし診療に多大な支障が生じかねない。
ネット署名4日で10万筆超
全労連が呼び掛けた、保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化することに反対する緊急のネット署名は、わずか4日で10万筆を超えた。
『週刊文春』(10月27日号)では、マイナ保険証に対応するためのシステム導入が義務化され、医療機関が厳しい状況に追い込まれている、と実情を訴える保団連のコメントが掲載された。
保団連は、患者・国民など広範な市民と共同して、24年秋の保険証廃止の政府方針の撤回を求めるとともに、保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守る取り組みを強めていく。