【主張】防衛費の2倍化は中止し、医療・社会保障の拡充を
政府・自民党は防衛費を対GDP比2%以上の10兆円以上にすることを方針化している。本当に必要なのだろうか。
長年にわたる新自由主義政策により所得格差が拡大した。この20年で大企業の経常利益と内部留保は約2倍、配当金は約5倍となった。その一方で貧困は拡大し、所得再分配後の貧困率で見ると、G7の中で日本は米国に次いで2番目の「貧困大国」となっている。ごく一部の富裕層を除いて、一般の国民の生活は、若い世代から高齢者まで全世代で悪化している。賃金は上がらず、年金は減らされ、貯金は増えない。ところが税金・社会保険料や医療・介護の一部負担金はどんどん上がっている。そこにコロナ禍と物価高がのしかかってきた。今ほとんどの国民は、節約という名の生活防衛を強いられている。こんな状態の中で防衛費を2倍にすれば、日本の内政と外交は一体どうなるだろうか。
まず内政面では、医療・社会保障・教育など、国民の生活に直結する予算が大幅に削減されることは間違いない。消費税がさらに上がる可能性もある。軍事費を増やすときに国民生活が犠牲になることは、歴史を見ても明らかである。防衛費2倍化が強行されれば、疲弊しきっている国民生活は、致命的なダメージを受けるだろう。今やるべきことは、防衛費を削減するとともに、大企業がため込んだ利益の一部を賃金や税・社会保障費として国民に広く還元することであると考える。そうすれば、国民の生活が改善するだけでなく、内需が拡大し日本経済の回復にもつながる。
また外交面では、日本の大幅な軍事力強化は、東アジア諸国やロシアとの関係を悪化させるため、平和をもたらすことはない。領土問題や拉致問題の解決もさらに遠のく。偶発的な軍事衝突から戦争に発展するリスクも高くなる。国民の生命を守るには、戦争をしないことが最も重要である。それには、戦争の原因となり得る紛争の火種を話し合いで解決するべく、外交努力を続ける他に道はない。
防衛費の2倍化は、国民生活を根底から破壊するばかりか、近隣諸国との関係を悪化させ戦争のリスクも高める「史上まれに見る愚策」というべきである。