【主張】物価高騰対策は賃上げと 消費税減税でこそ
国民生活を圧迫する物価高騰が加速している。岸田政権はこの物価高に対して、所得税非課税世帯1世帯あたり5万円の給付を決め、今後電気代抑制策も検討している。だが、この程度では到底解決に及ばない。物価高は日銀の「異次元の金融緩和」政策が円安を誘導し、輸入物価を押し上げていることが要因だ。企業の内部留保は516兆円を優に超える一方で、賃金は横ばいである。これらをもたらしている政治そのものを今こそ転換することが必要だ。
コロナ危機やインフレへの対応のため、世界の99の国・地域で日本の消費税に当たる付加価値税の減税が実施されている。今夏の参院選でも各党派別得票数からみると消費税減税を掲げる党派の得票が多かったが、与党はいまだ減税への舵を切れていない。
保団連夏季セミナーで講演した中央大学の建部正義名誉教授は、デフレ脱却に向け円安に誘導する日銀の金融緩和策は、輸出大企業の目線はあっても国民目線はないと指摘。物価高に対しては何よりも国民の賃金を上げ、雇用を拡大することが先決と述べている。世界の潮流や歴史を踏まえた識者の助言を顧みない、財務省の施策一辺倒でいいのか疑問である。
物価高騰は、コロナ禍で逼迫する医療機関にも大きな影響を及ぼしており、保団連は「新型コロナ感染症対応地方創生臨時交付金」の拡充と、各自治体での活用を訴えてきた。そうした中、政府は9月、医療機関も対象とする「電力・ガス・食料品等価格高騰地方交付金」を新設し、総額6千億円を措置した。各地の協会・医会の取り組みにより、交付金を利用して医療機関の支援を決める自治体も出てきている。
国会議員要請で懇談した議員からは、物価高騰対策で、国民に平等に手当するにはやはり消費税減税が最善ではないか、との意見もいただいている。
旧統一教会問題や元首相の国葬問題で岸田政権の支持率が大幅低下した今、現実的な物価高騰対策に眼を向けさせる絶好の機会である。岸田政権には国民が少しでも経済的なゆとりを取り戻せる施策を英断してほしい。併せて消費税増税を法人税減税の穴埋めに用いてきた政策を猛省し、少なくとも、緊急に税率を5%に引き下げて国民生活の不安を一掃する足がかりにしてもらいたい。