【主張】介護保険制度改悪に反対し安心の社会保障を

【主張】介護保険制度改悪に反対し安心の社会保障を

 2000年4月に介護保険制度が新設された。高齢化・核家族化の進行により、かつて、入院は必要がなくなったのにさまざまな問題で退院できない「社会的入院」が問題になり、何とか地域でその人の生活を支える制度が必要ということでできたものだ。
もともと制度設計に大きな問題点があり「地域で支える」として共助の要素が大きいため、利用費の増加が保険料に直接連動する。当初平均的保険料は月に2千円前後であったが、現在は約6千円、高齢者が増加する数年後には9千円との試算もある。また生活保護受給者にも保険料負担があり、「公助」の視点が欠落している。医療のように現物支給ではなく、現金支給であり、要介護度によって利用が制限される。加えて要介護認定が不合理で実情と合わないこと、また客観性に欠けることは担当医のみならずケアマネジャーも実感するところである。
コロナ禍でエッセンシャルワーカーの重要性が顕著になったにもかかわらず介護報酬があまりにも低く、介護労働者の労働条件が悪いため、現場での人手不足は深刻である。
厚労省の社会保障審議会は、来年度の介護保険制度改定に向けて、これらの問題点を改善するどころか負担増・給付減の論議を始めた。7つの項目からなり、①被保険者受給権者の範囲の見直し(例えば保険料は30歳から徴収、利用できるのは70歳からなど)②補足給付の在り方(光熱水費、食費の負担増。資産要件の厳格化)③老健施設などの多床室の室料有料化④ケアプラン作成の有料化⑤要介護1・2の生活援助の保険給付外し⑥利用料2~3割負担の対象拡大⑦高所得者の保険料引き上げ―などが挙げられている。
コロナ禍、不安定な世界情勢で、諸物価の上昇、引き下げられる年金、重くのしかかる消費税に加えて、もともと欠陥だらけの制度を、ほとんど利用できない制度、共助制度ですらあり得ない保険料だけ徴収する制度にまでしようとしている。現実問題として診療報酬と同じで、介護報酬も削減されるに違いない。
介助の必要な人々が地域で安心して過ごすためには医療・介護が両者ともに充実していることが必要条件である。自助・共助の制度でなく、憲法25条にのっとった「社会保障制度」となるように、国民運動を盛り上げていこう。