【国会審議】保険証廃止、オンライン資格確認質問続く(11月1日厚労委審議)

 11月1日の参議院厚生労働委員会では、引き続き、保険証廃止・オンライン資格確認義務化をめぐり質問が続いています。各協会・医会からの議員要請が国会での質疑につながっています。

厚労省は、オンライン資格確認義務化の年末再検討に向けて「『医療機関の責めに期さない事由による場合は経過措置が必要』という声も聞いている」などとして踏み込んだ答弁をし始めています。質問の模様を伝えます。

 

「23年4月延期に懸念」 東議員(維新)

東徹参議院議員(維新の会)は、保険証廃止を進める立場から、中医協の年末再検討において「23年3月末のオンライン資格確認導入の義務化の時期を遅らせるのではないかと懸念される」と質問。

伊原和人保険局長は「23年4月の原則義務化は前提」とした上、「医療機関の責めに帰すべき事由がないにも関わらず、医療機関で導入が困難となる一部のケースについてどういう支障・要因があるのか」について調べるものとして、あくまで「一部の医療機関について事情を考えるもの」と義務化の除外を絞り込む姿勢を強調しました。

中医協「付帯意見」では、地域医療に支障を生じる等「やむを得ない場合の必要な対応」について検討するとしており、「医療機関の責めに帰すべき事由」かどうかなどに限定していないことに注意が必要です。

電子処方箋も義務に、加算は廃止を 東議員(維新)

同様に、東議員は、「(23年1月運用開始予定の)電子処方箋を義務化していく検討の見通しはあるのか」と質問。八神敦雄医薬・生活衛生局長は「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(2022年6月)」に拠りつつ、「2025 年3月を目指して、オンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関等での電子処方箋導入を目指す」としました。東議員は「導入を義務化していくべき」と念押ししました。

さらに、医療情報・システム基盤整備体制充実加算に関わって、東議員は「国民に(医療情報連携の)恩恵が及ぶのがまだまだ先の中、マイナンバーカードの保険証利用により、窓口負担が上がることは国民の理解が得られない」として質問。加藤勝信厚労大臣は、「診療報酬を介して供給を増やしていくとともに、患者負担が増えることで、受診動向が変わる両面を見ながらバランスよく進めていく」としました。東議員は「負担を増やすことはやめるべき」と加算廃止を求めました。

保険証廃止に向け検討進める 厚労大臣

芳賀道也参議院議員(国民民主党)は、「保険証の原則廃止から廃止への方針転換」に関して政府に明快な説明を求めました。

加藤厚労大臣は「何らかの事情で手元にマイナンバーがない人も必要な保険診療等を受けられるよう手続きを取る」と岸田首相の答弁を繰り返した上、「様々なケースが考えられる」として、資格を確認する方法について「広く国民の声も踏まえながら丁寧な検討を行いたい」と述べ、関係省庁による検討会を設置して環境整備を図っていくとしました。世論の反発・異論に押され「国民の声を聴く」と言い訳をしつつも、あくまで保険証廃止は進める構えです。

4割トラブルで「オンライン」といえるのか 芳賀議員(国民)

オンライン資格確認整備について、加藤大臣は「中医協の審議事項よりパブコメの適用除外」とした上で「三師会も参画する中で丁寧に進めている」と強弁しました。

芳賀議員は「国民の声を聞く、様々な分野の声を聞くことは必要ではないか」と指摘し、保団連が実施中の緊急調査結果(速報)を紹介。オンライン資格確認を開始した医療機関の4割でトラブルが発生し、「被保険者情報が迅速に反映されない(有効な保険証でも「無効」と表示された)」が63%、次いで「カードリーダーの不具合」が41%などと紹介し、厚労省にトラブル状況把握を質しました。

伊原保険局長は、「三師会のオンライン資格確認推進協議会や支払基金コールセンターに様々な医療機関の声が寄せられている」としてトラブル発生状況は認めたものの、27日の参議院厚労委員会と同様、詳細について明言を避ける無責任な姿勢に終始しました。

芳賀議員は、「デジタル化している意味がない。『トラブルを把握している』と言うならばなおさら慎重に行うべきではないか」と指摘しましたが、伊原保険局長は「保険証でもデータ更新のタイムラグ問題がある」と開き直る姿勢を示しました。

「命の危機にある今、混乱招くな」 芳賀議員(国民)

芳賀議員は、「建物改修工事がすぐには困難なケース、改修注文が殺到して時間と手間、さらにコストもかかる」ことから、「(23年3月末の)期限までに導入するのは事実上難しい」と指摘し、「療養担当規則の保険医指定取消の罰則までつけて急いで(義務化は)行うべきではない」と求めました。東議員への答弁と同様に、伊原保険局長は、「『医療機関の責めに期さない事由による場合はその経過措置が必要』という声も聞いている」として、「やむを得ない場合に取る対応」に向けて検討するとしました。

芳賀議員は「まずはしっかり実態調査を行い、現場の声も聞く、導入は任意に留めるなど、ソフトランディングを図るべき」と求めつつ、「コロナ感染再拡大による命の危機がある時に現場が混乱するような状況は少しでも減らすことが命を守る責任者の務めではないか」と指摘しました。