【国会審議】オンライン資格確認関連質問相次ぐ(10月26日厚労委)

オンライン資格確認関連質問相次ぐ 10月26日厚労委審議

河野太郎デジタル大臣の「保険証廃止」会見の余波も冷めきらない中、翌26日の衆議院・厚生労働委員会では、予算委員会などに続き、保険証廃止・オンライン資格確認義務化をめぐる議員質問が行われました。各協会・医会からの議員要請が国会での質疑につながっています。26日の質問の模様を伝えます。

与党からは、あくまで推進の立場ですが、佐藤英道衆議院議員(公明党)が、患者・国民や医療現場の不安に応えるため、「マイナンバーカード紛失、停電時、災害、サイバー事案などで対応指針をできる限り早期に示すべき」と国に求めました。全国で議員要請が取り組まれる中、与党議員にも国に丁寧な対応を質す姿勢が見られます。

 「保険証をそのまま使えばよい」 早稲田議員

「骨太の方針2022」では、「保険証の原則廃止」を目指すとして、「加入者から申請があれば保険証は交付される」としています。早稲田ゆき衆議院議員(立憲民主党)は、河野大臣が述べた「保険証廃止」と従前の政府方針である「保険証の原則廃止」との関係について質しました。

早稲田議員は、「加入者が望めば保険証は交付される骨太の文言は生きているでよいか」と単刀直入に確認。加藤勝信厚労大臣、大串正樹デジタル副大臣は、「『骨太の方針』を加速化して、24年の秋に保険証の廃止を目指すということ」とした上で、「マイナンバーカードがない人には様々なケースがあり、個々のケースを見て受診時の対応について検討する」として曖昧な答弁を繰り返しました。加入者の希望に応じた保険証交付ではなく、カードが手元にない理由・事情で選別を図りたいとする姿勢が垣間見えます。

早稲田議員は、「持っている保険証は使わず、国民に混乱も招き、お金をかけて『証明書』のような新しい制度をつくることは愚策ではないか」として「マイナンバーカードを申請しない人は今の保険証をそのまま使えばよい」と求めました。また、「(今回の保険証廃止のように)余りごり押しするといろいろなことがうまくいかない」と政府の姿勢についても厳しく批判しました。

医療機関の持出常態化の改善を 吉田議員

続いて、吉田統彦衆議院議員(立憲民主党)が補助金を中心に質問しました。吉田議員は、オンライン資格確認義務化をめぐり「現場は混乱しており、非常に評判が悪い」と指摘。保団連の要請資料でも強調していますが「マイナ受付(8月)はオンライン資格確認の0.4%にすぎず、来年4月の整備義務化は拙速ではないか」と求めました。

特に、システム導入に係る補助金に関わって、吉田議員は「実際に調べてみると、見積額が(診療所の)補助金上限43万円の10倍かかるケースも聞かれた」と指摘。「見た限りでは法外な見積額が多く200万円以下の見積がなかった」、「さらに新たに管理費も生じるが、診療報酬加算を算定しても償却するのに例えば20年かかる」など医療機関が持ち出しを強いられている現状を詳しく紹介し、「必要最低限のシステム整備対応については、国が導入の目安額として設定した43万円など補助上限に納まるよう全国の業者に通知すべき」と求めました。

加藤勝信厚労大臣は「ベンダー業者には医療機関に丁寧な説明をするよう求めていく」と問題があることは認めたものの、見積額の改善に向けては、厚労省の伊原和人保険局長は「これまでもベンダーなどとも協議している」と釈明する一方、「あくまで民間契約なので国としてできる範囲は限られている」と消極的な姿勢を示しました。重ねて、吉田議員は「医療機関はコロナ感染拡大で経営状況が悪化し、受診患者数も完全には戻ってきていない」として、国が見積額の改善に向けて指導力を発揮するよう強く求めました。

また、吉田議員は、協会・医会調査結果を念頭に「義務化を機に閉院を考えるとのデータが出てきている。よく現状を見てほしい」と整備対応が困難な医療現場への理解を求めました。

カード未所持者対応を質す 宮本議員

宮本徹衆議院議員(共産党)は、「マイナカードは紛失すると役場に行き発行に1月かかる。定期の更新時も郵送では交付されず、毎回役所に取りに行く必要がある」として、即日~1週間で発行される現在の保険証と比べて「利便性の面でも現在の保険証よりも低い」と指摘しました。

マイナカードを持たない人への医療保障に関わって、岸田文雄首相は10月24日、保険料を支払っている以上、カードがない人も窓口で一部負担を支払えば保険診療は受けられるとした上で、「別の制度的対応を(厚労省に)準備させている」と答弁しています。宮本議員は「首相が述べた別の制度とは経過措置、恒常的措置のいずれか」と質問。加藤勝信厚労大臣は「マイナカードがない様々なケースが想定されるため、具体的な制度設計や実務運営面については今後検討する。現時点では具体的なものを念頭に置いていない」として明言を避けました。「保険医療を当然受けられる以上、恒常的措置ではないのか」との宮本議員からの再質問に対して、加藤大臣は「カードが手元にない事情がいろいろあり、その辺も良く検証しながら対応を検討していきたい」と繰り返し、恒常的措置とは明言しませんでした。

新保険証の有料発行否定せず 厚労大臣

報道によれば、▽マイナ保険証を持たない人に向けて現在の紙の健康保険証を一定期間持ち続けられるようにする、▽ただしマイナ保険証への移行を促進するため、24年秋以降は紙の保険証発行を有料とする案などが政府内で取りざたされています。

こうした報道を紹介しつつ、宮本議員は「新規の保険証は有料で発行するのか」と質問。加藤大臣は「これから検討するので、ああだこうだとは言えない」と回答を避けました。宮本議員は「今後の検討に向けて原則論は言えるはずだ。保険料を払っている人に(発行の)自己負担を求めることはありえない」と指摘。「『保険料を払っている人は保険医療を受けることができる』と首相が述べている以上、『恒常的措置で無料発行にする』が厚労大臣として当然の答弁ではないか」と追及しました。

「今の保険証と『新たな保険証』は何が違うのか」との質問に対しても、加藤大臣は「何も決めていないので比べられない」と無責任な答弁に終始しました。カード取得に向けて、限定的で、マイナカードを持たない人が不利益を被る制度的対応に留めたい姿勢が伺えます。

医療DXありき 厚労大臣

重ねて、宮本議員は「マイナカード取得は任意である以上、今の保険証を利用する人はそのまま保険証が使えると言えばよいだけだ」と指摘。他方、加藤大臣は「今の事態では医療は変わらない。より質が高い効率的な医療に向けて、医療DXを進めていくことが必要」として、マイナカード利用を前提とした「医療DX」ありきの姿勢を示しました。

マイナカード普及の先には金融口座(預貯金)を基にした患者負担増が狙われています。宮本議員は、「全ての預金口座にマイナンバーの附番を求めていくのか」との質問に対して、加藤大臣は「口座の附番状況を踏まえて検討していく」と述べ、曖昧な答弁に終始しました。

国会での質問相次ぐ

各協会・医会からの議員要請が国会での質疑につながっています。「マイナンバーカードを取っていない人は、この資格証明書みたいに窓口全額負担になるのか(共産・山添拓参議院議員 10/20予算委員会)(立憲・後藤祐一衆議院議員 10/24予算)に続き、「高齢の歯科医師が閉院を考えているとの声を聴く」(自民・比嘉奈津美参議院議員 10/19予算)、「カード申請ができない人もいる。離島やへき地でのオンライン資格確認の整備は大変。不安に感じている」(維新・片山大介参議院議員 10/20予算)などオンライン資格確認の義務化に関わる質問が相次いでいます。