75歳以上 保険料引き上げを提案

75歳以上 保険料引き上げを提案

社保審・医療保険部会 中間層にまで対象拡大

 厚労省は11月17日、社会保障審議会・医療保険部会で、後期高齢者医療(75歳以上)の保険料を1人当たり年4千円引き上げることを提案した。

続く負担増に懸念相次ぐ

厚労省は、医療保険部会で75歳以上の保険料について、能力に応じた負担の強化を掲げながら、高額所得者だけでなく中間層を含め、2024年度に1人当たり年4千円の引き上げを提案した。
現役世代から75歳以上の医療保険への「支援金」の抑制を口実に、後期高齢者の1%を占める「高額所得者」を対象に保険料上限を年66万円から80万円に引き上げる。年金のみで年153万円超の収入がある人についても、収入に応じて決まる保険料の「所得割」部分を引き上げる。部会では、財界側の賛成がある一方で、10月の75歳以上の医療費窓口負担2割化実施後間もない高齢者への連続する負担増を懸念する意見が相次いだ。

日医・日歯も懸念

日本医師会副会長の猪口雄二氏は、「全世代で負担を分かち合うということは理解する。ただ後期高齢者医療制度は、窓口負担の2割化に加え、保険料において所得割と均等割の比率を変える、負担能力に応じて保険料を引き上げる等が検討されている。あまりにも多くの項目で変更がありすぎるのではないかという印象を持っている」と発言。
日本歯科医師会常務理事の林正純氏は、「急速な制度の見直し、特に保険料負担や窓口負担の増加には慎重な議論をお願いしたい。世代間における公平さだけの議論にならないように、所得の低い高齢者を含めてどのような対象者にどの程度の負担を求めるかについては、高齢者への過度な負担の増大の結果、受診抑制が生じないようバランスのとれた納得感のある制度改革を丁寧に行ってほしい。加えて、今年10月からの『75歳以上の医療費窓口負担2倍化』後の受診動向などを調査してほしい」と訴えた。

世代間の分断を乗り越えてこそ

政府は、「現役世代の負担軽減のため」として、世代間の分断をあおり、高齢者への負担増を進めている。そもそも社会保障制度として、国の責任でいつでも、どこでも、だれでもが安心して医療が受けられることが前提だ。
今こそ、社会保障の原理・原則に立ち返り、国庫負担の増額や所得再分配機能の強化が求められている。これ以上の高齢者いじめ、世代間の分断によるごまかしは許されない。